2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25800174
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阪野 塁 東京大学, 物性研究所, 助教 (00625022)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 近藤効果 / 量子ドット / 電流揺らぎ / スピン縺れ |
Research Abstract |
低バイアス非平衡近藤効果による電流揺らぎ特性を次の2点について解析を行った。1つめはフント則交換相互作用をもつ軌道縮退アンダーソン模型の各チャンネル電流の交差キュムラントを完全係数統計を用いて解析を行った。特に交換相互作用がある場合には、3つの異なったチャンネルの電流間に相関が働くことを明らかにした。これは直接相互作用では見られない特徴であり、実際の実験などにおいて量子ドットに働く相互作用を特定する手掛かりとなり得る。2つめは、スピンS=1の近藤状態にある2重量子ドットの非平衡電流中のチャンネル間のスピン相関が、ベルの不等式を破り、準粒子の量子的なスピン縺れ対が生成されることを明らかにした。これは半導体中に多体効果を利用してスピン縺れ対を生成するための新しいアイディアであり、量子情報などで重要な量子状態制御の新しい方法となりうると考えられる。 また、高バイアス、高温それぞれの極限におけるSU(2)アンダーソン模型で表される、2つのリードに繋がれた量子ドット系について、熱場の理論を援用することで厳密解を導出することに成功した。特にすでに低バイアス、低温、低バイアス極限はフェルミ流体論でよく理解されているため、この研究によりSU(2)アンダーソン模型の低エネルギーと高エネルギーの両極限の詳しい理解が得られたことになる。本課題の目的の一つは、有限温度、有限バイアスでの電流揺らぎを詳しく解析することであるが、このとき低エネルギーから高エネルギー現象へのクロスオーバーが起こっているため、その理解に大きく寄与する重要な結果である。今後、有限温度、有限バイアスでの数値計算を進める際、高エネルギー極限での有力なベンチマークにもなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に行われた研究で、交換相互作用を持つ軌道縮退アンダーソン模型の各チャンネル非平衡電流について完全係数統計を行ったことで、局所フェルミ流体で記述される範囲の電流揺らぎの特性の基本的な特性は、ほぼ明らかに出来たと考えられる。さらに、高バイアス極限のアンダーソン模型の厳密解を得たことで、低バイアスから、高バイアスまでの電流揺らぎの解析を、数値計算と解析手法で相補的に行うためのステップも順調に進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度後半よりカーボンナノチューブ量子ドットでの近藤効果による電流雑音特性を観測している実験グループと議論を行いながら、研究を進めている。そこで実験解析に有用な、電流雑音のバイアス線型応答特性についての理論の構築や、電子-正孔非対称な場合など解析などにも力を入れて研究を推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本課題に関連する講演依頼を予定していたが、講演者の都合が合わず、本年度中の助成金の使用ができなかった。 本課題研究についての情報収集と、共同研究者との打ち合わせのための旅費として使用する。
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Research Products
(8 results)