2013 Fiscal Year Research-status Report
3d遷移金属酸化物のナノ超構造化技術構築と巨大磁気応答性評価
Project/Area Number |
25800178
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
服部 梓 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (80464238)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 強相関酸化物 / ナノ超構造 / 磁気抵抗効果 |
Research Abstract |
機能性金属酸化物のナノ構造化による高機能創出を目的として、対象物質の成長位置、形状、サイズを3次元方向全てで精確に制御して作製する独自ナノ超構造創製技術「3次元ナノテンプレートPLD法」を確立してきた。3次元ナノテンプレートPLD法により線幅を精密に制御して室温強磁性半導体(Fe,Zn)3O4 (FZO)単結晶ナノウォール細線構造を実施し、その断面透過電子顕微鏡(TEM)観察を行った。TEM像より、FZOナノウォールが基板である3D-MgO側面から面内方向にエピタキシャル成長しており、高品質な結晶構造を有していることがわかった。この手法では、任意形状の選択、面内で厚みを制御したナノ構造の作製も実現できる。同手法で、ナノレベルで精密に空間制御し、自在にサイズを調整したナノ超構造体:巨大磁気抵抗効果を示すペロブスカイトMn酸化物(La,Pr,Ca)MnO3 (LPCMO)ナノボックス構造の創製にも成功した。硬X線光電子分光を用いた電子状態解析から、ナノボックス試料では通常の薄膜試料より50 K以上高い温度から絶縁相への転移が生じることを明らかにした。転移点の上昇は3次元ナノ構造形状に由来することが示唆され、ナノ構造化が遷移金属酸化物のエレクトロニクス機能開拓・特性向上に有用であることを示す成果である。更にデバイス展開に最適な構造である、線幅50 nmの(La,Pr,Ca)MnO3ナノウォール細線構造を創製し、電気特性評価を行った。バルクや薄膜試料では見られない抵抗の急峻な変化:デジタル磁気抵抗が発現すること見出された。ナノ細線では薄膜には見られない急峻なMR変化が現れた。これはsub-100nmのサイズを有する単一電子相をナノウォール細線中に閉じ込めたことにより、単一電子相の相転移を直接的かつ効率的に検出できたことに由来すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究期間内に明らかにする事として、以下の3点を当初目標として挙げた。 (1)10nmレベルのナノスケールで望みの物質の空間的配置と次元性を任意に制御した酸化物ナノ超構造の形成を実現し、従来困難であった3次元ナノ構造体制御およびその学理を構築する。 (2)電気伝導、磁気抵抗効果評価などのナノ超構造体の基礎物性評価、デバイス機能評価を通じて、デバイスサイズと機能(増幅)特性の相関を明らかにする。 (3)上記(1)、(2)で得た知見を基に、材料のもつポテンシャルを最大限に発揮できる構造をデザイン、作製し新奇省エネルギーナノデバイスのデモンストレーションを行う。 現時点で(1)、(2)まで達成でき、(3)のデバイス化に向けた電界効果トランジスタ(FET)デバイス構造の作製に成功しており、電界による基本動作の確認に成功しており、当初目標を達成できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、LPCMOナノ細線を基盤とした超省エネルギー電界制御型不揮発性スピンメモリの創製に注力する。ゲート電極から電界を印加し書き込み層の強磁性を抑制する事により、磁化を反転の為の書き込み電流を大幅に抑制する、電界制御型超省電力不揮発性スピンメモリ動作をデモンストレーションする。 第一に、有機イオン液体をゲート絶縁層に用いたLPCMOエピタキシャルナノチャネル電界効果トランジスタ構造の輸送特性評価に重点的に取り組む。イオン液体の特徴は、電気二重層と呼ばれる分子層程度の帯電層にあり、わずか数Vの電圧においても電気二重層を介してMV/cmを超える電界が生じることで、巨大なキャリアドーピング効果が得られる。前哨実験として作製したLPCMO薄膜FETデバイス構造において、電圧極性、チャネル膜厚、温度依存性の詳細な評価を行った。イオン液体/LPCMO-FET構造においては、p型の挙動を示し+3Vのゲート電圧印可で電子ドープに相当する金属-絶縁体転移温度の減少、抵抗の増加がみられ、-3Vのゲート電圧印可で転移温度の上昇、抵抗の減少が観察されホールドープに相当する挙動が観察された。本プロジェクトで具体的出口に掲げている超省エネルギーナノスピンデバイスの具現化に当たり、これまでに達成したLPCMOナノ細線構造をベースにイオン液体ゲート絶縁層を追加することにより、電界制御で磁化をスイッチング機能を実現する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
電界効果を効率的に行うべくナノデバイス構造の最適化を行った結果、当初計画していたナノ構造と変更を生じた。そのため、インプリント用モールドが当初計画より安価になり、経費が節約できたため。 今年度推進するナノ細線構造の電気伝導測定用の電極材料、光学特性を評価するための、反射測定装置の購入に充てる。
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