2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25800187
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小濱 芳允 東京大学, 物性研究所, 助教 (90447524)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 強磁場 / 熱容量測定 / 磁性 / 低温物性 / 熱伝導率 |
Research Abstract |
本研究の目的は、70Tまでの強磁場パルス磁場下での精密比熱測定を成功させ、これまで不可能だったパルス高磁場領域での熱力学的研究を可能とさせる事である。25年度は、以下に示すように精力的に装置開発を進め、2つの量子スピン磁性体において比熱測定を執り行った。 1.もっとも大きな成果として、36ミリ秒幅のパルス磁場下での比熱の絶対値測定に成功した。この装置は比熱だけではなく、磁気熱量効果も同時測定することができ、磁性体の磁場・温度相図の研究に有効であることが分かった。この成果は、Measurement Science and Technology誌に掲載され、IOP Selectにも選ばれた。2013年に開催された物性研短期研究会でも発表した。 2.フラストレートした量子スピン系Cu3Mo2O9の比熱および磁気熱量効果を56.5Tまで測定し、磁場をa軸、b軸に平行に印加したときの磁気相図を明らかにした。磁場をc軸に印加した測定は、1Kまでの低温領域まで行いたいと考えており、3Heクライオスタットおよびその専用プローブの開発を進めている。この成果は2013年9月の日本物理学会で報告した。 3.量子スピン系梯子格子化合物BiCu2PO6において、比熱および磁気熱量効果を測定した。この研究では、グルノーブルにある強磁場施設(LNCMI)の35T定常マグネットも利用し、パルス磁場下で取得された我々のデータが満足のいく精度を有している事も確かめた。この結果として、磁気相図を明らかにし、基底状態の縮退度が印加磁場方向に敏感であることを解明した。この成果については、2014年3月に開催された日本物理学会で報告した。 4.今回の装置開発で得られたノウハウは、異なった極限環境下での比熱測定に応用できる。このため、30Tまでの定常強磁場・100mKまでの極定温領域で作動する熱量計の開発も併せて行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本課題の目的に掲げている、ミリ秒パルス磁場下での比熱測定に成功し、その成果を論文発表することができた。この論文はIOP selectにも選ばれ、国内外でも広く注目を集めている。パルス磁場下での比熱測定は、これまで秒オーダーのパルス磁場下でのみ成功してきたことを考慮すると、得られた成果は予想(計画)以上と言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
開発した測定装置は、常用56.5Tの36ミリ秒パルス磁場下で2K~30Kの温度範囲で作動する。さらなる高磁場・もしくは低温での測定が必要であれば、状況に合わせて測定装置を改良する。例えば、2/3プラトーを示すフラストレート磁性体Cu3Mo2O9においては、高磁場のプラトー領域での基底状態を解明するために、55T・1Kまでの比熱データが必要となる。このため、より低温までの比熱データを取得するべく、3Heクライオスタットの開発と、それを利用できる比熱プローブの製作を進めている。 BiCu2PO6については概ね測定は完了しているので、成果をまとめて論文誌への投稿を進める。 基本的には、25年度に開発した比熱測定装置を基盤として、計画どおり研究を推進することで、さらなる飛躍を期待している。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
装置開発が予定よりも早く進んだために、海外での定常強磁場施設で比熱測定を行った。 このため、旅費の金額が予定より多くなり、いくつかの装置を25年度は購入できなかった。25年度の購入物品を減らし、26年度へ持ち越すことで装置の購入を行うこととした。 26年度は海外への出張を予定しておらず、旅費は抑えることができる。 加えて、繰越した金額を使うことで、当初から予定していた機器を購入する。
|
Research Products
(11 results)
-
[Journal Article] Magnetic and Dielectric Properties in Multiferroic Cu3Mo2O9 under High Magnetic Fields2014
Author(s)
Haruhiko Kuroe, Kento Aoki, Ryo Kino, Tasuku Sato, Hideki Kuwahara, Tomoyuki Sekine, Takumi Kihara, Mitsuru Akaki, Yoshimitsu Kohama, Masashi Tokunaga, Akira Matsuo, Koichi Kindo, Masashi Hase, Kanji Takehana, Hideaki Kitazawa, Kunihiko Oka, Toshimitsu Ito, and Hiroshi Eisaki
-
Journal Title
JPS Conference Proceedings
Volume: -
Pages: 印刷中
Peer Reviewed
-
-
-
-
[Journal Article] Antiferromagnetic Ordering in Sr2CrO42013
Author(s)
Malika Rani, Hiroya Sakurai, Susumu Okubo, Keisuke Takamoto, Ryohei Nakata, Takahiro Sakurai, Hitoshi Ohota, Akira Matsuo, Yoshimitsu Kohama, Koichi Kindo and Javed Ahmad
-
Journal Title
Journal of Physics: COndensed Matter
Volume: 25
Pages: 22601 (5pp)
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-