2014 Fiscal Year Research-status Report
スピン-軌道相互作用が拓く非一様系で現れる新奇超伝導・超流動現象
Project/Area Number |
25800194
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
青山 和司 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00623133)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 超流動ヘリウム3 / ストライプ相 / スピン・軌道相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の研究目的は、制限空間内の超流動ヘリウム3及び空間反転対称性の破れた超伝導体を対象に、システム表面の効果やドメイン境界における準粒子状態を明らかにすることであった。超流動ヘリウム3はスピン三重項p波のCooper対凝縮状態であり、その秩序変数は、スピン自由度と軌道自由度から成る内部自由度をもつ。申請者は、昨年度、磁場下の空間反転対称性の破れた超伝導体とのアナロジーから、細い円筒容器内に閉じ込められた超流動ヘリウム3において、容器表面の準粒子散乱と秩序変数の内部自由度によって、円筒軸方向に自発的に並進対称性を破る超流動相(ストライプ相)が現れることを明らかにした。本年度は、ヘリウム3の超流動薄膜を対象に、表面のコンディション(specular かdiffusiveか)が、このストライプ相の安定性にどのような影響を及ぼすかを、Ginzburg-Landau 理論に基づいて調べた。基盤上の超流動ヘリウム3を想定した上面specular下面diffusiveの条件では、ストライプ相は両面specularの場合に比べその安定性は弱まるものの依然として存在すること、平行平板中の超流動ヘリウムを想定した両面diffusiveの場合には、ストライプ相の安定領域がほぼ消失してしまうことが分かった。本結果は、平行平板中では平板表面をヘリウム4で覆うなどしてある程度specularにしなければ、超流動ヘリウム3のストライプ相を実験的に観測することは困難であることを示唆している。本内容については、日本物理学会で講演を行い、現在、論文を執筆中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超流動ヘリウム3のストライプ相については期待以上に理解が進んだ。その一方で、ストライプ相の表面状態、空間反転対称性の破れた超伝導体におけるドメイン境界の準粒子状態については、現在、Eilenberger方程式を用いた数値解析の実現に向け試験的計算を進めている段階であるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、解析計算に基づいて超流動ヘリウム3のストライプ相の安定性をシステム表面のコンディションに着目して議論した。 最終年度は、空間反転対称性の破れた超伝導体及び制限空間内のストライプ相を対象に、現在進めているEilenberger方程式を用いた数値解析を行い、システム表面やドメイン境界における準粒子状態を明らかにする。
|
Causes of Carryover |
昨年度、国際学会において研究成果発表を行う予定であったが、申請者の都合がつかず学会へ参加できなかったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
当分野の海外の実験・理論研究者の方々と、本プロジェクトの研究成果及び今後の発展性を議論するため、短期での渡米を予定している。
|
Research Products
(4 results)