2013 Fiscal Year Research-status Report
パルス強磁場を用いた 多重極限環境下精密物性測定装置の開発
Project/Area Number |
25800198
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木田 孝則 大阪大学, 極限量子科学研究センター, 助教 (50452412)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 多重極限環境 / パルス強磁場 / 高圧力 / トンネルダイオード振動法 / 鉄系超伝導体 |
Research Abstract |
本研究では,非破壊型パルスマグネットとダイヤモンドアンビル圧力セル(DAC)を組み合わせた,多重極限環境下物性測定装置を開発し,圧力誘起超伝導転移を示す鉄系超伝導体の母物質(BaFe2As2など)の上部臨界磁場およびその異方性を調べ,この物質群の超伝導発現機構の解明に向けた指針を得ることを目的としている。DACは容易に高圧力を発生できる利点があるが,圧力発生空間が狭いため試料への端子付けに特殊な技術を要する。そこで本研究では,トンネルダイオード振動(TDO)法と呼称される,試料への端子付けが不要な非接触型の高周波電気抵抗測定技術を導入した。 本年度は,まずクライオスタット,測定系の開発およびTDO回路の自作から始めた。TDO回路はrf発振回路であるので,安定した発振を得るためには検出コイルのインピーダンス整合の工夫が必要であった。代表的な鉄系超伝導体の1つであるFe(Te,Se)を用いて,定常磁場・常圧下で本装置の動作確認を行ったところ,この物質の超伝導転移に対応する発振周波数の明瞭な温度変化・磁場変化を観測した。また,40テスラを超えるパルス磁場中においても,この物質の超伝導転移,すなわち上部臨界磁場の測定に成功した。 高圧力の発生にはNi-Cr-Al合金製DACを,圧力の保持には金属ガスケット(SUS310製)を用いた。Fe(Te,Se)を用いて約6 GPaまでの高圧力下で上記と同様な測定を行ったところ,定常磁場中では問題なく測定できたが,パルス磁場中では金属部品の渦電流によるジュール発熱が見られた。本研究の成果を,日本物理学会第69回年次大会で報告した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,クライオスタット,測定システムの開発および常圧下でのTDO測定を目標としていたが,実際には次年度に計画していたDACを用いた高圧力下でのTDO測定まで行うことができた。新たな課題が見つかったものの,概ね研究計画に即して順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
Ni-Cr-Al合金製DACと金属ガスケットの組み合わせで,鉄系超伝導体のパルス磁場中TDO測定を実施したが,パルス磁場発生時に伴う渦電流によるジュール発熱の効果が非常に大きいことがわかった。その対策として,今後は非金属のDACおよびガスケットの開発を実施する。非金属DACは,過去に研究代表者らがパルス磁場中で使用した経験のある,高強度プラスチックのPBI(ポリベンゾイミダゾール)製のものを使用し,ガスケットはダイヤモンドパウダーとエポキシ樹脂の混合物を用いて作製する予定である。
|