2013 Fiscal Year Research-status Report
一軸圧力が誘起するスピン・格子結合系の新奇交差相関応答の探索とその起源の解明
Project/Area Number |
25800203
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
中島 多朗 東京理科大学, 理学部, 助教 (30579785)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 強相関系 / 一軸圧力 / スピンフラストレーション |
Research Abstract |
本研究は、強相関電子系においてしばしば現れるスピン・電荷・軌道・格子自由度を巻き込んだ複合的な秩序状態に対して「一軸圧力」を加えて結晶の対称性をコントロールすることで誘起される新たな交差相関現象を開拓することを目指している。 申請時の研究計画では、研究対象物質として(1)スピンの秩序が系の反転対称性を破ることによって強誘電性が生じるマルチフェロイック物質であるCuFeO2、(2)結晶構造転移と磁気秩序が密接に相関している鉄系超伝導体FeTe1-xSex、の二つをあげていたが、この申請以前に進めていた研究「スピンフラストレーション系におけるスピン誘導型強誘電性の圧力制御:科研費若手B(H23-24+一年延長)、研究代表者 中島多朗」において(1)についての研究が大きく進展したため、本研究では(2)の研究を中心に行った。 本年度は、Feカルゴゲナイド超伝導体の母物質であるFeTeにおいて、一軸圧力中で放射光X線回折実験とモンゴメリー法による電気抵抗の異方性測定を組み合わせた同時測定をつくばのPhoton Factory BL-3Aにおいて行い、この系において結晶構造の異方性が電気抵抗の異方性と密接に結びついていること、さらには構造相転移温度の直上で、格子の大きなソフト化が起きていること等を明らかにした。 また、新たな物質としてスピネル型結晶構造を持つスピンフラストレーション系物質GeCo2O4についても実験を行い、対称性の低下を伴う結晶構造相転移によって生じるドメイン構造が一軸圧力で制御可能であることを見いだした。この物質は系の幾何学を反映した特殊な磁気励起である「スピン分子励起」も観測される物質であり、今後はこの一軸圧力によって格子歪みのドメインをそろえた状態で磁気構造や励起スペクトルの探査を行うことを計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H25年度は「研究実績の概要」で示したような実験を行い、論文として発表するに値するデータを得ることが出来た。現在論文は準備中であり、更なる追加実験、および新しい強相関物質についての一軸圧力効果の探索についても方針が立ちつつある状況である。本課題では、放射光X線回折実験などで大型共同利用施設を使うことが必須であったが、H25年度前半にPhoton Factoryでの実験の課題申請を行い、受理されたため、H25年度後半には実際に実験を行って上記の成果を得ることが出来た。申請は2年間有効であり、H26年度も実験を行う期間を確保することが出来ている。
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Strategy for Future Research Activity |
H26年度より研究機関を移動して、独立行政法人理化学研究所の創発物性科学研究センターの特別研究員として研究を継続することになったが、本課題を継続するために必要な実験環境は十分整っており、計画通りに研究を進めることができると思われる。 H26年度以降は、一軸圧力の効果として、ドメイン構造の制御だけにとどまらず、一軸圧力誘起の新たな相転移の発見、さらには一軸圧力に電場や磁場等も加えた多重極限下で期待される新たな交差相関応答を探索して行くことを計画している。具体的には磁場によって電気分極の方向を可逆的に制御することができる低対称マルチフェロイック物質を用いて、磁場及び一軸圧力中における磁気的・誘電的性質を測定する実験を計画中である。 また、実験手法として、前年度も行った、一軸圧力中でのX線回折、磁化測定、電気分極測定、電気抵抗測定等の精度を高めるような装置改良を行いつつ、これら複数を組み合わせた多重測定システムの開発も行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
未使用額はH25年度の支払い請求額の1.6%程度の僅かな値であり、今年度分の予算はほぼ予定通り実験装置の開発等に最大限有効に活用することが出来ている。基金化されたこの種目の特性を最大限生かすべく、僅かに残った金額は来年度の研究費へとまわすこととした。 H26年度は、所属機関の変更に伴い、現在使用している一時加圧装置を新たな所属研究室の測定装置に合わせるために多少の改良を加えることを予定している。そのための新た部品購入等にこの科研費を使用する計画である。 また、「今後の研究の推進方策」の欄でも述べた通り、今後は、これまで取り組んできた一軸圧力測定を組み合わせた多重測定システムの作製を計画しており、これに必要な新たな計測器類を購入することも検討してる。 今年度も外部の大型共同利用施設での実験を計画しており、その際の旅費も科研費が支出する予定である。すでにつくばでのPhoton Factoryでの実験が決まっており、これに加えて、現在海外の中性子散乱施設での実験を申請中である。
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Research Products
(2 results)