2014 Fiscal Year Research-status Report
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25800204
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀田 知佐 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (50372909)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 電荷ゆらぎ / ディスオーダー / 電子相関 / 磁性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は, 2次元分子性結晶ET塩などで報告されている電荷の不均一現象の由来を理論的に明らかにし, そこに量子多体問題が果たす役割を理解することを目標としている。本年度は, そのメインテーマの「ダイマーモット絶縁体系における 電荷ダイポールの揺らぎと相関の競合」の結果, 実験で示唆された電荷ダイポールグラス状態が実現するかどうかの検証を行った。 具体的には連続時間量子モンテカルロを用いて2次元格子上の横磁場イジング模型を解析した。昨年度, ダイマーモット絶縁体であるkappa-ET系の一連の諸物質の第一原理計算を行った. その結果得られたtransfer integralおよび, 結晶構造から見積もった分子軌道間クーロン相互作用Vから今回の横磁場イジングモデルのイジング相互作用と横磁場項を導出したところ, 系は強磁性型の正方格子的イジング相互作用をもつこと, および量子モンテカルロ計算で得られた低温での相図で, 無秩序相から長距離秩序相への転移点近傍の無秩序相に系が位置することがわかり, 実験と本モデルとの整合性が明らかとなった。また, 相転移近傍の強い電荷ゆらぎの結果, 電荷感受率(複素誘電率の虚部と対応)に顕著な周波数分散が観測されることも明らかとなった。 結論として, 実験で得られたグラス的なdisorderと解釈された現象は, 単純に電荷の臨界現象にともなうものであるという物理的には至極シンプルな理解が得られた。本結果は横磁場イジングモデルという最も有名かつ基礎的なモデルの一つにおいてすら, これまで臨界的な揺らぎが動的な物理量にどう反映されるかが十分理解されていなかったことを物語っている。 本研究と関連し, 実験グループと共同で1次元性の強い新しいkappa-ET2(BN)4という物質の性質を解析も行った。これらの結果は現在投稿中あるいは投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度, 所属研究機関異動のため, 研究の遂行に遅れが生じたが, 本年度は是を取り戻す形で順調に計算が進み 本課題の主要目的のひとつである電荷の揺らぎの問題が解決した。 昨年度の遅れの影響が残り、今年度の成果は現在、論文執筆中および投稿中であるが、それ以外の関連する研究についても徐々に発表を行っており概ね順調といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はさらに、得られた電荷揺らぎの効果がスピン液体状態などの磁性状態にどう影響するかについても詳しく検証したい。 これ以外の研究目的として、ディスオーダーにも使用することができる手法上の発展を考えているので 今後はその方向についても研究を推進し、多角的な観点から、量子多体問題における揺らぎやディスオーダーの問題について成果を得たいと考えている。
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