2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25800215
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
今村 卓史 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70538280)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | KPZ方程式 / レプリカ法 / ランダム行列 |
Research Abstract |
Kardar-Parisi-Zhang(KPZ)方程式は、界面成長を記述する方程式として誕生したが、より広い非平衡臨界現象のクラスを代表する方程式として重要である。2010年以降空間1次元のKPZ方程式の理解が、確率論や表現論、数理物理学との関連で大きく進展している。これまでは、高さゆらぎの臨界指数にのみ注目されていたのに対して、最近の進展では高さゆらぎの確率分布関数の厳密解が得られている。これにより指数だけではとらえられない性質、すなわち分布関数の初期条件依存性や普遍的クロスオーバー等普遍性の新たな側面をとらえつつある。 平成25年度はnarrow-wedge型と呼ばれる初期条件における1次元KPZ方程式の同時刻2点分布関数について考察した。この2点分布関数については、普遍性の観点から長時間極限で2型エアリー過程と呼ばれる確率過程に収束することが予想されていた。しかし最近のDosenkoの研究で得られた2点関数の表式は、通常知られている2型エアリー過程の表式と異なりその関係が明らかではなかった。我々はこれについて研究し、両者が一致することを明らかにした。これによってKPZ方程式は空間2点相関のレベルで予想される普遍性を記述していることが分かった。今後は長時間極限だけでなく、有限の時刻における相関の普遍性についても明らかにしていきたい。そのためには、KPZ方程式に潜む数理構造特に自由フェルミオン構造の理解が不可欠である。またこのような高さ分布関数の大偏差特性も理解していきたいと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
統計物理学において2点相関関数は重要な物理量であるが、我々の研究対象であるKPZ方程式で2点相関の普遍性に関する新たな知見が得られたことが今年度の主要な成果である。これにより、今後の研究の足掛かりとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
1次元KPZ方程式の高さゆらぎに関する研究は、可解な数理構造が明らかになったことにより大きく進展した。特に高さゆらぎの指数モーメント母関数が(フレドホルム)行列式であらわされる。このような自由フェルミオンの構造がなぜKPZ方程式という非線形確率微分方程式に現れたか、その仕組みを理解していきたい。それによって、KPZ方程式の多時刻多点相関や大偏差関数の理解につなげて行きたい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度(平成26年度)は本課題の3年計画の2年目に当たり、計画を十分に遂行するため。 研究会や共同研究者との議論のための旅費、ノートPCやソフトの購入、また関連分野の研究者への謝金に使用する計画である。
|