2014 Fiscal Year Research-status Report
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25800215
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
今村 卓史 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70538280)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | KPZ方程式 / 確率過程 / 可積分系 / ランダム行列 |
Outline of Annual Research Achievements |
O'ConnellとYorによって導入された、2次元ランダム媒質中のポリマー模型(以後O'Connell-Yorモデルと呼ぶ)の数理構造について研究を行った。このモデルは、量子戸田格子、geometric RSK対応、マクドナルド対称関数などに関連する数理構造が明らかにされている点、また確率熱方程式やKardar-Parisi-Zhang(KPZ)方程式をスケール極限として含んでいる点で、最近のKPZ方程式、KPZ普遍クラス研究の発展において中心的な役割を果たしている。
我々はこのO'Connell-Yorモデルの分配関数の積率母関数が、行列式型の測度を用いて表示されることを明らかにした。この測度はGUEランダム行列の固有値の確率測度と同様な行列式の積で表され、またゼロ温度極限でGUEの固有値測度となるという特徴を持つ。この表示の利点は、従来のランダム行列理論や行列式点過程で得られた結果をそのまま適用でき、O'Connell-Yorモデルの自由エネルギー分布やそのスケール極限を詳細に議論することができることである。O'Connell-Yorモデルの分配関数はN本のブラウン運動を用いて表現することができるので、N自由度相互作用ブラウン粒子系とみなせる。我々は上記の結果を導出するに当たって、N(N+1)/2次元というさらに大きな実数空間上の行列式型測度を導入し、いくつかの性質を考察した。我々の主結果はこの性質の帰結として得られることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
KPZ普遍クラスに属する代表的なモデルであるO'Connell-Yorポリマーモデルに潜む数理構造の一端を明らかにできたことは、この構造の理解の深化およびモデルの物理的理解の深化の両面で更なる研究の発展につながると期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、O'Connell-Yorモデルで得られた行列式構造が他の関連するモデルでも現れるのか、またこの構造を用いることでこれまで考察されてこなかったモデルの物理的性質が明らかになるかを考えたいと思っている。
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Causes of Carryover |
物品を補充する計画であったが、現状で十分で新たに購入する必要がなかったこと。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、2016年2月、3月にカリフォルニア大学サンタバーバラ校でKPZ普遍クラスに関する滞在型のプログラムが予定されており、私も参加者としてまたプログラムの途中で開催される国際会議の組織委員として比較的長期に滞在する予定である。今年度の繰り越した補助金は主にこのプログラムの旅費、滞在費に使わせていただく予定である。
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