2015 Fiscal Year Annual Research Report
自律的情報処理を行う分子機械の非平衡統計力学に基づく研究
Project/Area Number |
25800217
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
沙川 貴大 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60610805)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | ゆらぎの定理 / 情報熱力学 / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度の研究では、自律的な情報処理を行う分子機械についての一般論についての研究を行い、以下の二つの成果を得た。 (1)自律的な情報処理と非自律的な情報処理をつなぐ理論の構築。本研究課題が開始されるまでに、非自律的な測定・フィードバックについての熱力学の一般論はよく理解されていた。一方、本研究課題の26年度までの研究で、自律的な測定・フィードバックの熱力学の一般論を構築することができた。しかし両者の関係は不明であった。そこで27年度では、両者の間をつなぐモデルを構築し、自律的な情報処理におけるゆらぎの定理は、非自律的な場合の極限として理解できることを示した。この成果はNew J. Phys.から出版された。 (2)自律的な情報処理の熱力学には、本研究課題で研究した「測定・フィードバック」型の定式化だけでなく、「情報浴」を用いた異なる定式化も研究されていた。しかし両者の関係は不明であった。そこで27年度の研究においては、両者がある意味で等価であることを示し、測定・フィードバックの定式化を用いると、情報浴による定式化よりも強い第二法則が導けることを示した。この成果はNew J. Phys.から出版された。 本研究課題の研究期間全体を通して、自律的な情報処理の熱力学の一般論の構築と、その生体情報処理への応用を行ってきた。とくに、自律的な情報処理の熱力学の一般論を、二通りの方法で定式化した。さらに、それと他の定式化(非自律的な情報処理や、情報浴の定式化)との関係も明らかにした。さらに、分子モーターや大腸菌のシグナル伝達といった、実際の分子機械についての理論的研究も行った。とくに後者については、情報処理の熱力学を適用することで、大腸菌の適応の頑健性と情報流の間の関係が明らかになった。 これは研究実施計画の通りの成果であり、研究目標は十分に達成されたと言える。
|
Research Products
(19 results)