2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25800232
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐々木 裕司 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00649741)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 高感度熱測定 / 液晶界面 |
Research Abstract |
本研究ではネマチック液晶が示すアンカリング転移と呼ばれる現象を取り扱った。アンカリングとは界面で液晶分子の巨視的な向き(配向)が定められる現象である。ここでは温度変化によって二種類のアンカリングが現れる。これはアモルファスフッ素樹脂であるCYTOPとネマチック液晶CCN47を用いることによって観察することが可能である。通常の相転移ではなく界面に誘起された分子の構造転移であるため、その転移はバルクの試料では観察することができないという特徴がある。温度に誘起された配向変化は、液晶の複屈折性から光学的に見ることができるが、エネルギー的な観点からは理解が進んでいない。そこで本研究ではこのような界面の現象を熱的に明らかにするために、高感度示差走査熱量計を使用した測定が行われた。まず装置を作成した。センサーには小型のペルチェ素子を用い、半導体熱電対の熱起電力の大きさを利用して高感度化を実現した。また高密度なセンサーを使用することによって測定感度の更なる上昇が可能であることが分かった。続いて、熱測定用の試料セルの製作を行った。研究対象が界面現象であるため、カバーガラスにCYTOPをスピンコートし、セル厚が数マイクロから数十マイクロメートルとなるようにした。測定の結果、アンカリング転移が起こる領域で、DSCの曲線がステップ上に変化することが観察された。これはアンカリング転移によって分子配向が変化した際に、系の揺らぎが変化したものであると考察した。また、明瞭な一次転移であるにも関わらず潜熱が観察されない理由などについても考察を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
測定データの物理的な理解は不完全ではあるが、実験として転移に伴うDSCシグナルの変化を検出することができた。また装置作成の観点からは高感度化への可能性も示唆されてた。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点では、得られたデータの解釈に議論の余地が残っている状態であり、それを明らかにする努力が必要である。液晶には熱伝導率のように、熱的な異方性も存在するため、その影響についても検証することが求められる。しかしながら、これまでの問題として、アンカリング転移を研究可能な系が限られていたという点が挙げられる。現象が観察される系が限られているため、多方面からの検証が難しいという問題があった。このような背景の中で、最近になり、異なる液晶物質を用いた場合でも同様の界面転移を示すことがわかった。今後は、新たな系についても実験を行い、これまでの測定データがどれほど一般性があるかについて明らかにしていく予定である。
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[Presentation] 界面起転移の熱測定2013
Author(s)
佐々木裕司,星川光,折原宏,謝暁晨,竹添秀男
Organizer
日本液晶学会討論会
Place of Presentation
大阪大学(豊中市)
Year and Date
20130908-20130910
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