2013 Fiscal Year Research-status Report
粉粒体における相転移ダイナミクスと非線形レオロジーの競合
Project/Area Number |
25800234
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村田 憲一郎 東京大学, 生産技術研究所, 特任助教 (60646272)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 相転移ダイナミクス / 粉粒体 / 撥水 / 濡れ / フォーム |
Research Abstract |
粉粒体のレオロジーは、通常の流体とは全く異なるユニークな性質を示す。例えば、十分に弱い応力下での非線形応答や、外力(駆動力)の消失によるエネルギーの散逸などが挙げられる。これらの非線形レオロジーの理解は、非平衡物理学分野の大きな潮流の一つである。しかし、相転移や不安定化現象に伴う強い非平衡状態と粉粒体の非線形レオロジーの動的競合については未解明な点が多く残されている。本研究では、二次元系の一次相転移・不安定化現象の一つである(撥水)Dewettingを例にとり、粉粒体の非線形レオロジーより出現する非平衡過程(秩序化過程)における新たな動的スケーリング則と、それに付随する空間不均一性(パターン)の形成メカニズムの解明に取り組んでいる。平成25年度は、特にウェットフォーム(泡)に着目し、マクロレンズを搭載した高速度カメラを用いて、粉粒体膜の撥水による秩序化の素過程(平易に表現すれば、粉粒体膜に穴が空くプロセス)を1粒子レベルでの実空間・実時間観察を行った。当初の予想通り、構成粒子サイズが大きく、かつ粒子間相互作用の弱いウェットフォームという系の特徴を反映して、ダイナミクス自体が極めて遅くなり、転移の起点(瞬間)を直接捉えることに成功した。今後定量的な解析が必要であるが、転移が1つの泡(構成単位)の崩壊(破れ)から始まることを見出した。この初期における素過程と転移の中・後期におけるマクロな粗大化の関係は、ミクロとマクロをシームレスに繋ぐという観点から極めて興味深いと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究を遂行するための実験系の構築については概ね順調に進展しており、対象とする現象の観察自体は既に成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、定量的な解析をするために、より理想的な実験系の構築が不可欠であると考えている。この観点からの克服すべき課題としては、単層の粉粒体膜の作成と、膜の撥水を自発的に起こすことが可能な撥水性の高い基板を用いる、という2点が挙げられる。これらの点については現在、より精密に制御されたロールコート(粉粒体膜を基板上にコーティングする手法)を用いることで、2層から3層程度の粉粒体膜の作成に成功している。また自発的な撥水を誘起する超撥水性基板についても購入予定である。 また、自発的な撥水ではないが、外力下での撥水は容易に起こり(超撥水基板を必要としない)、かつ興味深い。例えば、薄膜を地面に対して傾けることで、重力により粉粒体に流れが生じる。この流動は撥水を誘起する。この現象は、流動場下における相転移現象とのアナロジーからも魅力的な問題である。当初計画をしていた異方性粒子も非常に興味深いが、現在の実験系の状況を踏まえ、外力下での粉粒体の撥水の研究に優先的に取り組む予定である。(この点については、研究計画調書の多方面からの検討状況においても記載している。)
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初購入を予定していたDigimo社製の高速度カメラより安価なディテクト社製のカメラを購入したため。Degimo社製のカメラは、その特性から高速度カメラでありながら長時間現象も同時に撮影することができるが、予備実験の段階で長時間撮影よりも高速度撮影の性能(画素数、フレームレート)が優れたディテクト社製のカメラの方が、本研究に適していると判断した。 先の項目で、超撥水基板上での実験を今後の課題として挙げた。差額分(次年度使用額)はその基板の作成、もしくは購入の費用に充てる予定である。
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