2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25800239
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Research Institution | Suzuka National College of Technology |
Principal Investigator |
丹波 之宏 鈴鹿工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (50436911)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 脂質膜 / ポア形成 / フラボノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
ある種のペプチドや小分子は、脂質膜の構造変化を誘起し脂質膜に孔(ポア)を形成させる。これらの外来物質がどの様なメカニズムで生体膜のバリア機能を破壊し膜中にポアを形成するのか、またどの様な構造のポアを誘起するのかは興味深く、その脂質膜との相互作用の研究が活発に行われてきたが未だ不明な点が多い。従来このような研究に困難があった点は次の2点にある。1つは外来物質が脂質膜に誘起するポアの直径が多くの場合数十nm~数nmと微小であり、その構造の詳細が得難かったこと。もう1つは、ポア形成の初期段階が33ms以下で起きるなど非常に高速であったため通常の計測方法ではポアの動的構造を捉えきれなかった事があげられる。これらの困難のうちポアの大きさについては、我々が発見したフラボノイドの一種であるエピガロカテキンガレート(EGCg)が脂質膜に誘起するポアは直径数micromと巨大であり、光学顕微鏡によるポア構造の可視化が可能である。そこで本プロジェクトでは、非常に高速で起こるポアの形成初期段階を含めたEGCgが誘起するポアの動的構造の詳細や、その力学的安定性を明らかにする。今年度は、昨年度に組み上げた高時間・空間分解能でGUVの脂質膜の状態を観測する測定系を用い、EGCgが脂質膜に誘起したポア構造をその形成初期段階からイメージングし、その詳細を解析した。この際、脂質膜にはコレステロール(chol)を含有させ脂質膜の物性を制御した。Cholを含有した脂質膜はEGCgの吸着に対して極めて安定であるが、低い確率でポアも形成される。Cholの含有量の違いによるポアの動的構造の差異は、脂質膜の安定性やEGCgによるポア形成のメカニズムを考える上で非常に示唆に富んだものとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は、昨年度に組み上げた実験系を用い、EGCgがGUVの脂質膜に誘起したポアの動的構造を、その形成初期段階からイメージングすること。その際には、ポアの動的構造にEGCg濃度や脂質膜中のコレステロール濃度が与える影響を調べること。これらの結果に基づき、EGCgが誘起するポアの力学的安定性や、ポアの形成メカニズムを明らかにすることを目指した。しかし、現在コレステロール含有脂質膜についての測定や解析を進めている段階であり、実験の進行状況には遅れがみられる。これは、想定していた以上の高時間分解能での観測がポアの動的構造の解析に必要となったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に遅れは見られるが、興味深い結果が得られつつある。平成27年度は、昨年度に引き続き、EGCgがコレステロール含有脂質膜に誘起したポアの動的構造ついて調べ、EGCgが誘起するポアの力学的安定性やポアの形成メカニズムを明らかにする。ポアの形成メカニズムをサポートする実験も併せて行い、早急に、その成果を学術誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
エピガロカテキンガレート(EGCg)が脂質膜に吸着した際に膜に誘起するポアの動的構造を捉えることに成功し、EGCgが誘起するポア形成のメカニズムに迫る興味深い結果を得つつある。ただし、想定した以上の高時間分解能での観測が必要であり、それが故に解析結果はバラつきの大きいものとなった。そこで、実験系の改良を行い、また、結果の信頼性を高めるために測定回数を当初の計画より大幅に増やす必要が生じた。すなわち、興味深い結果が得られつつあるが、研究計画に遅れが生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本来、今年度後半に行う予定であった、ポア形成のメカニズムをサポートする実験を行うため、および論文の投稿費用に使用する。実験としては、マイクロピペットを脂質膜に引っ張り張力を加えた脂質膜や、基盤支持された脂質膜とEGCgとの相互作用を調べる。
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