2013 Fiscal Year Research-status Report
可変波長中赤外線レーザーによるレーザーレーダーを用いた火山性ガスの遠隔検知の実現
Project/Area Number |
25800252
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
冨田 孝幸 独立行政法人理化学研究所, 光量子工学研究領域, 特別研究員 (70632975)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 遠隔検知技術 / 防災技術 |
Research Abstract |
平成25年度の達成目標は『可変波長中赤外線レーザーの開発』である。これは所属する光量子制御技術特別開発チームにて開発済みである波長可変レーザーシステムの出力に対してZnGeP2(ZGP)結晶の利用した光パラメトリック発振(OPO)を行い、火山性ガスの分光計測が可能な2~6μmの可変領域の実現するものである。しかし、予算、納期に折り合いがあわず結晶の入手が困難であった。このため、使用する非線形光学結晶、共振器用の鏡の再検討を行う必要があった。非線形光学用結晶の再検討にあたり最重要となる波長も検討する必要があった。本研究の目的は火山活動に密接であると考えられる火山性ガスを継続的に捕捉することを火山活動メカニズム等を解明するための装置開発である。そこで、火山ガス中における最重要と考えられる成分のみに捕捉対象限定する必要があった。これまでの火山ガス計測における報告では、対象となる火山によって噴火と相関のある成分は異なっている。しかし、近年の研究において、火山ガス中の重水と水の混合比を測定することで、火口のマグマ温度の正確な計測や火山ガス中の水蒸気の起源を同定が示唆されている。よって、ガス内の水蒸気中における重水と水の計測を第一目標とした。重水と水の吸収特性は酷似しているが、3.0μmと3.5μmでの計測により定量的な計測が可能である。よって両波長を含む3.0~3.7μmの発振を可能とするPPLN結晶を採用を決定した。 上記の再検討と同時進行にて所属研究室で既に保有していたZGP結晶を使用したレーザーにおけるOPO部も開発を行った。この結晶は目標波長用に設計されたものではないが、結晶角を調整することによって目標波長の一部である4.5~6.0μmの波長域での出力に成功している。 また、平成26年度の達成目標である『受光検出器の開発』における検出器の選定・最適化を先行して行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の達成目標は『可変波長中赤外線レーザーの開発』である。これは、所属機関で開発済みの波長可変レーザーの出力に対し、ZnGeP2(ZGP)結晶の利用した光パラメトリック発振(OPO)行うことで達成予定であった。しかし、予定していた結晶の入手に困難が生じ、火山ガス中の捕捉対象から利用結晶までを含めた大きな再検討することが余儀なくされた。このために、結晶の決定・入手までに時間を要してしまっている。再検討の作業と同時進行にて、所属研究室にて保有していたZGP結晶を代替に利用してレーザーを開発を行い、一部達成した部分に関しては評価することが可能と考えている。しかしながら、上記の再検討によって平成25年度中に達成する予定であったレーザー光源の開発には遅れが生じていることは否めない。 一方では、代替結晶にて開発を行ったレーザーを利用し、平成26年度の達成目標である『受光検出器の開発』における開発項目である検出器の選定や最適化を先行して押し進めることに成功している。受光検出器は本研究主要要素の1つであり、この部分にかんして先攻していることは、本研究の進展状況を判断する際には評価することが可能と考える。また、平成26年度計画に対する先行状況も平成25年度の計画の遅れ以上にあると考えている。 以上の2要因により、本予算における研究開発の進行状況は『(2)おおむね順調に進展している』と評価することを妥当と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のとおり、平成26年度の達成目標である『受光検出器の開発』には一定の先行があり、赤外線検出器の選定・最適化および入手は完了している。よって検出部の開発では遠隔検知用の光学系の設計開発および最適化のみとなる。よって早期に遠隔検知用の受光部である望遠鏡の購入をおよび光学定盤上での望遠鏡保持台の設計を進める。その後、望遠鏡による集光部ー光検出部間の光学系を設計開発、AD変換によるデータ取り込み部の開発を進める。予想される困難としては背景光・検出器暗電流・AD変換電子機器のノイズ除去があげられる。 検出器暗電流・AD変換電子機器のノイズ除去は光検出のみならず様々な検出器の開発で課題となる部分であり、ハードウェア・ソフトウェアのフィルターを用いた除去が可能となっている。検出器自体にもレーザーによる信号以上となる高周波信号除去のハードウェアフィルターが実装されたものを採用しており、その効果が期待される。ソフトウェアフィルターとしてはザビツキーゴーレイフィルター等を検討しており、開発過程でそれらの評価も行う予定である。背景光ノイズに関しては冷却した空間フィルターを使用することで熱赤外線の除去に効果が得られると試験により判明している。 一方で平成25年度分の積み残し課題では、共振器の開発がある。結晶以外の光学部品の選定も全て終了しているため、入手次第推し進めることが可能となる。 また、本年度における課題として、所属機関の変更があげられる。新機関は信州大学であり、遠隔検知のための光学系研究環境は整っている、一新されてた環境にて昨年度までの現状復帰には一定の時間を要すると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定したOPO結晶の入手が困難になり、再検討を行った。その中で平成26年度の計画を先行し、検出器の選定入手を行った。後にレーザー系の光学素子の選定を行い、OPO結晶を入手した。しかし、再検討による共振器用鏡の入手は納期により年度内の入手は断念した。このため共振器用鏡の価格と検出器の価格の差額分のプラス残高が生じた。 前述のとおり、昨年度の未購入分と本年度購入予定物品を先行購入分の差額であり、物品購入費として使用する。
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