2014 Fiscal Year Research-status Report
可変波長中赤外線レーザーによるレーザーレーダーを用いた火山性ガスの遠隔検知の実現
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25800252
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
冨田 孝幸 信州大学, 学術研究院 工学系, 助教 (70632975)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 遠隔検知技術 / レーザーセンシング / LIDAR |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の実施計画は『受光検出器の開発』である。計画は四段階に分かれている(1:赤外線検出器の選定、2:受光システムの開発、3:較正システムの開発、4:検出試験)。 1:赤外線検出器の選定。 中赤外線領域において極めて高感度である量子型のHgCdTe(MCT)を採用した。常温でも熱輻射として発生する中赤外線の検出では検出器冷却による熱雑音の除去が高感度化において極めて重要である。代表的な冷却方法は液体窒素と電子冷却によるものがある。取り扱いの平易さや安全性から電子冷却方式を採用した。これは、昨年度末に先行しており入手している。 2:受光システムの開発。 受光部は検出部と並んで本年度の重要な開発項目であった。受光部の口径の大きさが直接的に受光効率へ影響するためである。このため、微小な光信号を検出する際には可能な限り大きな口径であることが望ましい。また、望遠鏡にはレンズを利用した屈折型と鏡を利用した反射型があるが、波長による検出効率依存性の小さい反射式望遠鏡であるシュミットカセグレン望遠鏡を採用した。検出器サイズが1mmに対して望遠鏡の出力側の口径は40mmである。このためレンズによる集光システムの開発を行い、実験室レベルにて300倍の集光効率を実現した。 3:較正システムの開発。 本開発のようにレーザーを使用したアクティブセンサー(LIDAR)においては発信側であるレーザーの出力の変動を計測し、解析時に補正(較正)することによってより精度を高めることが可能となる。レーザーの出力モニタとして焦電型の検出器を採用した。 4:検出試験。 開発した受光部にて遠隔による光検出試験を行った。観測域の確保、試験時の安全性、機器の運搬を考慮し大学の体育館を実施地とした。最終目標である1kmには及ばないが、対象物に照射されたレーザー光の散乱の検出に成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度において中赤外線レーザーに使用するOPO結晶に変更があり、該当部に少々遅れが生じていた。前年度にいては検出部の選定を先行することで補ったが、本年度は所属組織を理化学研究所から信州大学へ変更したことにより、実験施設の環境や開発済みの項目を一から構築することを余儀なくされた。このため、前組織において常設されていたレーザーシステム開発用の光学定盤や励起用レーザーの新規確保に時間を要し積み残し部分が未解決である。既に光学定盤および励起用レーザーは確保されており開発を再開推進しているが、前述のように使用予定であった前組織で保有していた物品の代替品が光学ミラー等の様々な箇所で影響があり、その都度に選定および予算の都合の必要があり遅れがあることは否めない。 一方で、本年度予定の受光検出器の開発は順調に推進できている。これは受光検出器の光学特性等は実験施設の環境依存が少なく、独立した開発が可能である点に起因していると考える。 受光検出部の開発は計画に則した推進状況であるのに対して、実験施設の変更に伴う影響を大きく受けるレーザーシステムは一からの開発に一時的にではあるが大きく後退している。よって、現行の推進状況のみで評価するならば、極めて残念ではあるが『(3)やや遅れている。』とせざるを得ない。 しかしながら、新規環境において実験施設の環境は既に構築できており、開発を再開している点を推進状況とは別に評価すべきと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は本予算の計画における最終年度となる。このため、開発装置による検出性能を検証評価する必要がある。これは1:レーザー遠隔検知の実証、2:中赤外線光源の開発、3:ガス選別性の実証の3項目によって達成可能となる。 1:レーザー遠隔検知の実証。 受光検出器の開発は順調に推進している。平成26年度は機器の運搬、試験時の安全性を考慮したために屋外での観測は行わなかったが、既に運搬経路や輸送方法の検討は進んでおり、システム全体の輸送用装置の開発に着手している。 本研究ではレーザーを使用するため部外者の安全確保を考慮して一般の往来があるような場所での試験は不可能であり、十分な配慮をした試験地の選定を行う必要がある。よって屋外での運用を視野に入れた遠隔検知実証試験は試験地の確保後、早い段階で推進可能である。 2:中赤外線光源の開発。 前述のように、平成26年度は実験環境の構築に多くの時間を要したが、概ね物品の入手に成功しており、既に完了し推進中である。中赤外線は目では確認できないうえに環境雑音が極めて多い波長帯であるので、その発振の確認には慎重を要する。また、入手できた結晶は予算により比較的に耐性の低いものとなっている、一方で励起用レーザーには一般的なNd:YAGレーザーを使用できる利点がある。しかし、一般的なNd:YAGレーザーは結晶の耐性に比べて非常に高出力である。予算上、結晶の再入手は困難であるため注意が必要である。 3:ガス選別性の実証。 対象ガスはH2Oおよび、その同位体物質となる。性能確認のためにはこれらの濃度を一定とした環境での試験が必要である。このため、ガスチャンバーやガスセルを使用することが望ましい。これらの確保が懸念される。
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Causes of Carryover |
所属機関の変更に伴って計画当初とは実験環境が異なり必要物品は増加しているので、購入物品を熟考し予定予算で収めることができている。一方で屋外検出試験までの計画に遅れが発生しているため、屋外試験で使用予定であった旅費の請求を行っていない。このために差額が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前述のとおり、次年度計画に遠隔検知試験が含まれるため、使用年度は異なるが用途には変更はなく。屋外試験時の運搬費用として、次年度使用額とH27年度請求額を合わせて使用を予定している。
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