2013 Fiscal Year Research-status Report
極域成層圏の顕著な気温変動イベントとその長期変動メカニズムの解明
Project/Area Number |
25800261
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西井 和晃 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助教 (50623401)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 成層圏 / 惑星波 / 長期トレンド |
Research Abstract |
本課題の目的は2011 年春季に北極上空での成層圏オゾンホールを生じさせた顕著な成層圏気温低下メカニズムを明らかにすること,および,大気波動活動の 10 年規模変動を含む長期変化傾向の把握とその要因を明らかにすることである.平成25年度研究計画では,2011年春の成層圏北極域気温低下イベントのメカニズムを明らかにすること,また,翌年度の研究のための最新の長期間大気データ及び,気候モデルシミュレーションデータの整備を同時に行うことであった.気象庁が作成した大気データセットを解析することにより,この成層圏気温低下イベント発生のきっかけは,対流圏からの短期間の惑星波伝搬の増幅イベントに伴い成層圏極夜ジェットが不安定になったことであったことを明らかにすることができた.また,気象庁アンサンブル数値予報データセットを用いて,対流圏からの惑星波伝搬が短期間にとどまった予報メンバーは成層圏気温が低下していた一方で,長期間持続したメンバーは逆に昇温していたこと.このことは,対流圏からの惑星波伝搬の持続性によって成層圏ジェットの不安定性が異なることを示しており,再解析データの解析で示唆されたメカニズムを検証することできた.さらに成層圏への惑星波伝搬に大きな影響を持つ,西太平洋パターンと呼ばれる対流圏循環変動に対する海洋循環変動の役割について調査を行った. 一方,翌年度の研究のためのデータセットの整備はほぼ順調に行うことができた.また,オゾンホールに伴う南極上空の極域成層圏の寒冷化トレンドや,その対流圏循環への影響,そして対流圏循環の再現性に大きな影響を持つ低気圧活動などを気候モデルが再現できているかについて調査を行い,気候モデルが本研究で十分使用可能であることの確認を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の目的は,2011年春に北極域オゾンホールを生じさせた顕著な北極域成層圏気温低下メカニズムを明らかにすること,そして現在まで明らかにされていなかった大気波動活動の10年規模変動を含む長期変化傾向の把握とその要因について明らかにすることである.平成25年度には,気象庁が作成した大気データセットや数値予報モデルの解析から,2011年春の顕著な成層圏気温低下イベントについて,先行研究とは異なり,対流圏から伝搬してきた,顕著でかつ一時的な惑星波が成層圏上層で過剰反射を生じさせたためであったことが,このイベントのきっかけでを明らかにすることができた.ただし,極域成層圏の低温状態が2ヶ月程度持続した要因を明らかにすることができなかった.一方で,翌年度の研究のためのデータセットの整備やその予備的解析はほぼ順調に行うことができた.さらに成層圏への惑星波伝搬に大きな影響を持つ,西太平洋パターンと呼ばれる対流圏循環変動に対する海洋循環変動の役割について調査を行った.以上から現在までの達成度をやや遅れていると評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度中に明らかにする予定であったものの,明らかにすることができなかった,極域成層圏の低温状態が2ヶ月程度持続した要因について,研究協力者と相談した上で平成26年度の研究計画を練り直した.具体的には過去55年間の大気再解析データに基づき,過去に発生した同様の事例を抽出し,それらを持続性に着目して分類し,長期間持続する事例としない事例との振る舞いの違いをその西風ジェットや波動の不安定性の観点から調査する.また,平成26年度の研究実施計画通りに,気候変動予測のために行われた複数の気候モデルの長期シミュレーション結果を用いて同様な解析を行う.特に複数の気候モデルのうち,十分な成層圏循環を表現しているモデルとそうでないものとに留意することにより,再解析データに基づき得られた知見を確認すると共に,その長期変動の様子を明らかにする.そして,温暖化に伴う気候変化や,10年規模変動に伴い,成層圏気温低下イベントや対流圏から成層圏へ伝搬する波動伝搬がどのように変化しうるのかを明らかにする. 平成27年度は研究実施計画通りに,長期大気再解析データや気候モデルの長期シミュレーションに基づき,長期変動や温暖化に長期変化がなぜ生じるのかについての要因を明らかにする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究結果を早急に論文にまとめ投稿・出版する予定であったが,受理が遅れたためできなかった.また,データ整備のためにアルバイトを雇う予定であったが,予定よりもデータ整備の開始が遅れたため期間が短縮された.そして参加予定であった国内学会に参加できなくなった.以上により次年度使用額が生じた. 繰り越した予算は平成25年度に出版できなかった論文出版費のために使用する.また,平成26年度の研計画当初予定になかった国内研究集会に参加するためにも使用する.その他は当初の計画通りに,物品費として研究データ保存用の記憶装置,旅費として海外出張1回と国内出張2回,人件費,「その他」として論文出版費用として用いる.
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Research Products
(4 results)