2015 Fiscal Year Research-status Report
極域成層圏の顕著な気温変動イベントとその長期変動メカニズムの解明
Project/Area Number |
25800261
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西井 和晃 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助教 (50623401)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 成層圏 / 惑星波 / 長期トレンド / 中緯度海洋 / 西太平洋パターン |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度には,冬季極域成層圏気温が極端に上昇または低下した事例を抽出し,さらにそれらを10日間より短い事例と20日間より長い事例に分類し,それらの事例の違いをもたらす要因について調査を行った.持続期間の違いは,対流圏から成層圏への伝搬する惑星波の伝搬異常の持続期間によることが明らかになった.さらにその惑星波伝搬の持続期間の違いは対流圏の循環変動の振る舞いに大きく左右されることも示唆された. また,成層圏気温変動にとって重要な,西太平洋パターンと呼ばれる対流圏の遠隔影響パターンの力学過程に関する研究を行った.このパターンは北西太平洋で卓越するが,ここは西側に冷たい大陸,東側に暖かい海洋が存在する特異な領域である,この東西気温コントラストに伴う気候平均場の有効位置エネルギーを,西太平洋パターンは効率的に獲得することで,自身を維持することを明らかにした.このメカニズムは西太平洋パターンそのものの長周期変動や変化にとって重要であるのみならず,成層圏気温の長期変化を考える際にも重要である.さらに今年度は大気大循環モデル実験を,海洋開発研究機構の大型計算機を利用して行う機会を得たため,複数の海面水温や海氷を変えた実験を予備的ではあるが行った.ただし,与える海面水温場の南北勾配を北太平洋中緯度で意図的に平滑化した実験では,冬季極域成層圏の気温が有意に低下しており,この領域の海面水温変動が成層圏気温変動に影響を与えていることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は大気大循環モデル実験を,海洋開発研究機構の大型計算機を利用して行う機会を得たため,複数の海面水温や海氷を変えた実験を行い,成層圏気温変動への影響を調査する予定であった.しかし,このモデルの成層圏循環を現実的に表現するための改良と,本年度当初に行われた大型計算機更新後の新しい計算機環境に習熟するために当初予定よりも時間を要したため,必要な量の数値実験の実行と実験結果の解析が不十分になった.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に実行できなかった大気大循環モデル実験を行い,その結果の解析を行う.これにより,成層圏気温変動にとって重要な海域や海氷域を特定する.さらに当初には計画されていなかった設定で追加実験を行う.数値実験の結果のデータサイズが当初予定よりも増加したため,残りの予算での記憶装置の購入を予定している.さらにこれまで得られた知見を論文にまとめ出版する.
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Causes of Carryover |
一部は論文出版費に充てる予定であったが査読プロセスに時間がかかったため当該年度に使用できなかった.また,数値実験の実行が遅れたため,その実験結果を保存するための記憶装置の購入も当該年度にできなかった.また研究代表者が研究機関を異動する準備のために出張回数を減らしたため,使用した旅費も当初見積もりより減った.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文出版費,数値実験の結果を記憶するための装置,及び,学会で研究成果を発表するための旅費に使用する.
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Research Products
(7 results)