2013 Fiscal Year Research-status Report
スーパーアースの放射過程のモデリングとハビタブルゾーンマッピング
Project/Area Number |
25800264
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大西 将徳 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究員 (50644887)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 系外惑星 / スーパーアース / 放射伝達 / 惑星放射 / ハビタブルゾーン / 射出限界 |
Research Abstract |
当該年度は、スーパーアースの放射過程のモデル化・計算コード開発を主に行った。吸収線データベースはHITRAN2008、HITEMP2010を基本とし、連続吸収はMT_CKDモデルを採用した。GEISAやPartridge & Schwenke,1997やBarber et al.,2006といった別の吸収線データベース、また連続吸収についてもBPSモデルや吸収線のカットオフを変えて表現する方法などを検討したが、汎用性、計算効率、ユーザビリティなどの観点から上記を基本とした。 本研究ではスーパーアースを想定しており、地球よりも広い大気の温度圧力範囲での放射計算が必要である。特に高温での計算を行うために、HITEMP2010での効率的な吸収断面積の計算を検討した。放射計算を行いながら必要な温度圧力の吸収断面積を計算することは大きな計算コストが必要であり現実的でない。本研究ではあらかじめ温度間隔100K、圧力間隔1桁Pa、波数解像度0.01cm-1のデータセットを用意し、3次Spline補間によって効率的に、かつ精度よく吸収断面積を計算するアルゴリズムを開発した。 本計算コードは汎用性を考慮して、温度の鉛直プロファイルなどは外部データを読むように設計されている。系外惑星の進化を考えるうえで重要なH2O大気の計算を高温高圧環境にまで拡張して計算できるように、水の物性をIAPWS95の定式化を用いて計算できるプログラムを開発した。これにより気相液相領域や、超臨界流体領域をまたいで放射計算を行うことが可能となった。 上記の光学特性の計算、鉛直プロファイルの計算、放射伝達の計算を組み合わせることで、惑星表面のH2O量と温度を変化させた高波数分解能の放射特性計算を行った。この結果、赤外可視領域の複数のバンドで観測することにより、惑星の温度プロファイルとH2O量の推定の可能性を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度で実現を目指したのは、系外惑星での放射過程をモデル化し、計算コードを開発することである。この実現には1. 光学特性の計算、2. 鉛直プロファイルの計算、3. 放射伝達の計算、が必要である。また系外惑星での計算のためには、広い温度圧力範囲での計算を可能にすることが課題である。 光学特性の計算については、HITRAN, HITEMP, MT_CKDモデルを用いて、50種近い分子種を組成に持つ大気の吸収断面積の計算を70-3000[K]の温度範囲で行えるコードを開発した。散乱特性はRayleigh散乱の散乱断面積が計算できる。光学特性の計算として今後の課題となるのは、エアロゾルや雲の光学特性の計算である。 鉛直プロファイルの計算は、断熱温度プロファイル、放射対流平衡のプロファイルの計算を実装した。特に、水蒸気大気については気相、液相、超臨界流体相などの相転移も含む広い温度範囲での計算を実現するためにIAPWS95による水の物性の計算コードを開発した。 放射伝達計算については、2方向近似を用いた放射伝達を計算するコードを実装した。 以上、当初の目的をほぼ実現している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針は2点。1点目は、大気大循環モデルに組み込むための放射伝達コードの開発である。前年度の研究開発により、line-by-line法による高波数分解能の放射伝達計算は可能である。この計算結果をもとに、大気大循環モデルでも使用できる光学特性データセットをk-分布法を用いて計算するプログラムを開発する。大循環モデルは地球流体電脳倶楽部が開発しているモデルを扱う。3次元モデルへの適用は放射伝達、流体計算も考慮したスーパーアース大気の3次元シミュレーションが可能にする。このプログラムの実現で、M型星まわりのハビタブル天体で想定される中心星に近い同期回転した惑星の大気の計算など、鉛直1次元計算では扱うことが難しい天体への適用が可能となる。まずは惑星大気のエネルギー輸送や大気・惑星進化の観点から重要なH2O、CO2を含む大気から研究に着手する予定である。これらの分子を含む大気が引き起こす射出限界、温室効果がどのように現れるかを広範な惑星条件で計算することでハビタビリティの議論を行う。またH2O、CO2大気から着手することは、リファレンスの少ない系外惑星研究において、地球、金星、火星といった検証材料を持つ点からも重要である。本研究では、系内惑星での検証も行う。 2点目は、観測への提案である。上記計算により、ハビタビリティに関する知見が得られる。本研究では、さらに観測可能性に注目して、放射計算から観測可能量を見出すことを目指す。そのために、組成や地表温度、大気量などをパラメタとして、広範なパラメタ空間で数値実験を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
僅かに端数(15円)が生じた。 次年度の予算と合わせ、計算機関連の消耗品費などにあてる。
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Research Products
(4 results)