2014 Fiscal Year Research-status Report
スーパーアースの放射過程のモデリングとハビタブルゾーンマッピング
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25800264
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大西 将徳 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究員 (50644887)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 系外惑星 / スーパーアース / 放射伝達 / ハビタブルゾーン / 射出限界 / water loss limit / 対流圏界面 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、大気大循環モデルに組み込むための放射スキーム開発と、惑星環境の推定を行った。 大気大循環モデルに組み込むための放射スキーム開発は、単色バンドモデルから検討を始めた。単色モデルは計算コストが小さいことが利点である。line-by-line放射計算によるフラックスを再現するようにバンドの吸収係数を決めるアルゴリズムを採用し、地球、同期回転惑星を例に検証を行った。単色モデルではline-by-lineモデルとの加熱率の差を2 [K day-1]程度まで小さくすることができるが、さらに精度が必要な場合には、k分布モデルが必要であり、単一の吸収物質を含むモデルまで完成している。 惑星環境推定の観点では、放射モデルを用いて水蒸気を含む惑星大気の圏界面の推定を行い、ハビタビリティの考察を行った。この議論には大気の鉛直温度構造が重要であるが、Kasting et al., 1993 などで仮定されている大気構造は放射対流平衡構造を実現していない。放射対流平衡により圏界面が決まると仮定すると、対流圏界面は先行研究よりも高高度に存在し、成層圏の水蒸気量が小さくなることが示唆された。しかしwater loss limitは先行研究と大きく変わらないことが分かった。また地球に似た条件の惑星でも、オゾンを持たない大気では圏界面が現在の地球よりも高くなることが示唆された。オゾンは大気進化の後半で獲得される分子種であり、大気進化の過程で圏界面の位置が変化する可能性が考えられる。圏界面は成層圏と対流圏を分ける境目であり、大気進化の段階で大気大循環や物質循環が変化したことが示唆される。さらに私が開発した line-by-line モデルによる吸収係数を東大濱野景子研究員の開発したエネルギーバランスモデルに組み込むことで、マグマオーシャンを持つ惑星の進化と観測可能性について新たな知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度で目指したことは、大気大循環モデルに組み込むための放射モデル開発と、観測への提案を目指した惑星の環境推定である。 大気大循環モデルに組み込むための放射モデル開発では、単色モデルと k 分布モデルの開発を行ったが、k 分布モデルでは複数の物質を扱う場合については現在開発段階である。k 分布法を用いた枠組みで複数の物質を扱うモデルとする部分について計画が遅れている。 惑星環境の推定については、ハビタブルゾーンの内側限界の決定に重要な圏界面の高度推定を行った。上空まで対流混合したプロファイルによる推定から先行研究で考えられていたよりも上空の水蒸気量が少なくなることや、大気大循環や物質循環が惑星大気進化の段階で変化したことの示唆を得た。さらに私が開発した line-by-line モデルによる吸収係数を東大濱野景子研究員の開発したエネルギーバランスモデルに組み込むことで、マグマオーシャンを持つ惑星の進化と観測可能性について新たな知見を得た。 以上、大気大循環モデルへ組み込むための放射モデル開発という点で、当初計画よりやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針は2点。1点目は、大気大循環モデルに組み込むための放射モデルの完成である。前年度に開発したモデルの拡張として、k分布法を用いて複数の物質の混ざった混合大気を扱えるモデルを開発する。複数の物質を扱う場合に難しいのは、オーバーラップの問題である。私はこの点に関して以下のような方針で開発を進める。対象とする惑星大気の吸収スペクトルのline-by-line計算をもとに複数の物質の吸収スペクトルの大小関係を比較し、最も吸収の強い物質の波数範囲を目安にバンドを切る。その上で最も強い吸収物質の吸収断面積を k分布法のやり方で並べ替え、同時に吸収の弱い物質についても同時に吸収断面積を並べ替える。さらに最も吸収の強い物質にあわせてサブバンドを区切り、サブバンド内で、弱吸収物質の吸収断面積も並べ替える。これを繰り返して、複数の物質の k 分布放射モデルを完成させる。大循環モデルは地球流体電脳倶楽部が開発しているモデルを扱う。3次元モデルへの適用は放射伝達、流体計算も考慮したスーパーアース大気の3次元シミュレーションが可能にする。このプログラムの実現で、M型星まわりのハビタブル天体で想定される中心星に近い同期回転した惑星の大気の計算など、鉛直1次元計算では扱うことが難しい天体への適用が可能となる。 2点目は、これまでに開発した放射モデルを用いてハビタブルゾーンのマッピングを行うことである。これまでの研究の成果から、中心星放射のスペクトルの形が惑星大気の加熱冷却に大きな影響を与えることが分かってきた。中心星の放射スペクトルは、惑星との距離、年齢、恒星の質量などによって変化する。それらを考慮し、M型星、G型星周りの惑星について放射計算を行いハビタビリティの議論を行う。さらに実際に発見されている惑星を想定した中心星放射や、惑星の大気組成を与えた計算も行い惑星の環境推定を行う。
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Causes of Carryover |
旅費などが小さく抑えられたため、1万円ほど繰越が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の予算と合わせ、計算機関連の消耗品費などにあてる。
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Research Products
(14 results)
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[Presentation] Development of a radiative transfer model for steam atmospheres and application to Earth-like planets2015
Author(s)
Masanori Onishi,Yasuto Takahashi, Yoshiyuki O. Takahashi, Yutaka Abe, Keiko Hamano, George L. Hashimoto, Yoshi-Yuki Hayashi, Masaki Ishiwatari, Hajime Kawahara, Kiyoshi Kuramoto
Organizer
Workshop on Exoplanets in JFY2014
Place of Presentation
Fukutake Hall, The University of Toky
Year and Date
2015-03-02 – 2015-03-03
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