2014 Fiscal Year Research-status Report
ブロッキングに先行するストームトラック変動の解明:メカニズムと予測可能性
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25800267
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
山崎 哲 独立行政法人海洋研究開発機構, アプリケーションラボ, 研究員 (20633887)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ブロッキング / ストームトラック / 異常気象 / アンサンブル予報 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本付近で過去に発生したブロッキングと太平洋域のストームトラック(移動性高低気圧)との関係について長期大気再解析データ(全球の現実的な大気の状態を示すデータ)を用いて解析を行った.顕著な北太平洋ブロッキング14事例を検出し,そのときのストームトラックの変化やその他の大気海洋現象に関係する物理量との関係を調査した.調査の結果,ブロッキングの発生により関東・北日本を通過する移動性低気圧の頻度が増加することがわかり,それにより同領域での異常気象発生との詳細な関係が明らかになった.さらに,熱帯域の海面水温変動やユーラシア付近での偏西風の蛇行が,ブロッキング発生と同じタイミングか先行して変動する様子が見られた. また,ブロッキングの予測可能性研究を遂行するための新たな知見を得るため,アンサンブル再解析や予報での誤差情報の伝播を詳細に調査するため,2012年8月に北極海上で発達した低気圧のための観測システム実験と予報実験を大気アンサンブル再解析データALERA2を用いて行った.それにより,大気現象の予測に影響を及ぼす誤差の伝播やそれによる予報精度の変化について詳細な調査を行うことができた.更に,研究代表者の所属するチームで作成が続けられている再解析であるALERA2の期間を約1年分延長し,2014年12月までの大気データを作成した.この再解析を利用し,2014年2月に関東での大雪に関係したブロッキングのための解析や予報実験などを行うことができる準備を整えた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予測可能性研究で重要な予報初期場の誤差伝播論について,研究代表者が想定していなかった現象が見られたので,その現象のメカニズムの詳細な調査を行った.その調査のために,ブロッキングの発生する中緯度よりもより分析を行いやすかった北極域での低気圧事例を対象とした調査・解析を重点的に行った.また,ブロッキングと異常気象との関係について,これまでヨーロッパ付近でのブロッキングだけを調査しており,日本付近でのブロッキングと日本での異常気象との関係について不明な点が多かったので,先に日本付近での異常気象とブロッキングとの関係を調査することにした.それらに十分な時間を費やしたため,昨年度の研究実施報告書の計画案に記載されたブロッキング予測のポテンシャルの調査や誤差伝播メカニズムに関しての論文執筆を十分に行うことができなかった.ただし,今年度の分析で,誤差伝播についての新たな知見を得ることができ,かつ異常気象との関係についてもこれまでより明瞭にできたので,次年度はこの知見をいくつかのブロッキング事例予測のためのメカニズム・予測可能性に応用して交付申請書の予定を越える発見・成果が得られると予想している.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究で得られた誤差伝播に関する知見や長期のブロッキング変動についての統計的な取り扱いやデータ作成を行う.さらには期間が延長された大気再解析ALERA2を用いることで,いくつかのブロッキング事例について詳細な解析を行い,メカニズムや予測可能性変動について一般性の高い議論に結びつける. 基本的な方針は交付申請書や昨年度の研究実施報告書の計画案と変わらないが,今年度に得た新たな知見や解析ツールを用いてより高度な分析を行うことにする.
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Causes of Carryover |
論文の投稿プロセスが年度末に重点的に行われ,その結果受理が3月末以降に遅れることが予期されたため,その投稿料に関する支払いを次年度に持ち越すこととしたため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の前半期のうちに,今年度の3月末に受理決定した論文の投稿料や別刷り代として使用する予定である.
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Research Products
(22 results)