2014 Fiscal Year Research-status Report
化学指標の地理的パターンから復元する中生代温室期の異様な海洋・炭素循環
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25800288
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
柿崎 喜宏 明治大学, 研究・知財戦略機構, ポスト・ドクター (20570633)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 古海洋学 / ジュラ紀 / 厚歯二枚貝 / 炭酸塩 / 礁性生物相 |
Outline of Annual Research Achievements |
中生代中期(ジュラ紀後期~白亜紀前期)には,大気中の高い二酸化炭素濃度によって温室効果が働き,地球表層では異常な炭素循環が機能した.本研究は,日本・マレーシアなどの古太平洋地域の化石・石灰岩試料をもとに,堆積学,古生物学,同位体層序学(炭素・ストロンチウム)などの研究手法を活用して,当時の古海洋環境の復元に取り組む.さらに,テチス海のデータとの比較を行い,最終的には当時の海洋循環と炭素循環を復元することを目的とする. 今年度は昨年度から継続して,日本国内の鳥巣式石灰岩(ジュラ紀後期)の岩相と化石相の記載に取り組んだ.研究対象としたのは,大分県四浦半島に分布する津井層に含まれる鳥巣式石灰岩である.調査の結果,厚歯二枚貝が貧栄養の静穏な極浅海域でサンゴとともにバイオストローム(地層状に殻が密集した構造)を形成していたことが判明した.この産状はメガロドン類(厚歯二枚貝の祖先)や白亜紀のレクイエニア類(津井層の厚歯二枚貝の直系の子孫)のものと類似する.一方,他の鳥巣式石灰岩から報告された厚歯二枚貝の産状とは大きく異なっている.このことは,厚歯二枚貝は出現してから比較的早い時期にすでに生態を多様化させていたことを示唆する. この研究成果は 1)厚歯二枚貝がジュラ紀後期の段階ですでに様々な生息環境で適応放散していたこと,2)厚歯二枚貝の生息に適した温暖な海洋環境がすでにジュラ紀後期の段階で成立していたことを示唆している.この示唆はジュラ紀後期の海洋環境を考える上で重要な情報である. この研究成果は2014年9月に開催された日本地質学会,および2015年1月に発行された地質学雑誌において公表された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の一部として進めていた石灰岩の岩相・化石相の記載に関連して,大分県内の鳥巣式石灰岩から産出する厚歯二枚貝の産状記載の論文を2015年1月に上梓することができた.この論文が公表されたことで,出現最初期の厚歯二枚貝の古生態について広く議論することが可能になった.厚歯二枚貝の進化史は当時の海洋環境の変遷と大きく関わっており,本研究を遂行する上で重要な示唆を含んでいる. 現在,もう一つの調査地であるバウ石灰岩の厚歯二枚貝の産状についての論文も現在執筆中である.本研究計画のうち「石灰岩の岩相・化石相の記載」については,当初の見込み以上の成果が得られつつある. 一方,今年度に予定していたバウ石灰岩の厚歯二枚貝の同位体比の測定は未着手のままである.しかし,予備的な調査(薄片観察・化石試料の保存状態の確認)はほぼ完了しており,同位体比測定に向けた準備は着実に進行している.
以上のことから,本年度終了時点での達成度は「おおむね順調に進展している」と言える.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の野外調査によって,バウ石灰岩から厚歯二枚貝の化石と大量の石灰岩試料が得られている.薄片観察の結果,これら厚歯二枚貝化石の保存状態が良好であることが判明している.来年度はこれら化石・岩石試料の分析に専念する. また前述のように,バウ石灰岩の厚歯二枚貝化石の産状を堆積学的・古生物学的に記載した論文を作成中である.この論文化の作業は今後も継続する.
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Causes of Carryover |
アルゼンチン調査に必要な旅費・経費としてこの金額を取ってあったが,時間的な都合から,今年度は調査を見合わせた.このため,それに相当する金額を使用しなかった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
「今後の研究計画の推進方策など」でも記述した通り,平成27年度はこれまで採取した化石・岩石試料の分析作業が主要な仕事となる.そのため,分析機械のある研究施設までの旅費や研究施設に滞在する期間の宿泊費などに使用する.これは本来の使用目的にかなっており,今年度の研究活動を拡充する上でも必要である.
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Remarks |
研究代表者が本研究計画を開始する以前から作成しているWebページであり,これまでの研究内容全体を紹介している.その中には本研究計画の研究内容も含まれる.平成26年度の論文出版もこれらのWebページで報告した.今後も新しい研究成果が出るのにあわせて,Webページで情報を発信していく予定である.
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Research Products
(3 results)