2015 Fiscal Year Research-status Report
第三紀泥岩の分類:分光測色による「色層序学」の構築
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25800289
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
辻野 匠 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 主任研究員 (80357516)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 色層序学 / 分光測色 / スペクトラム / 泥岩 / 第三紀 / 珪藻 / 石灰質 / 陸源砕屑物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,これまで主観的に記載されてきた泥岩の色を分光測色計を用いて客観的に定量し,その分光値やスペクトラム特性にもとづいて,第三紀泥岩にたいして,定量的な色の層序を構築することである.一連の泥岩の層序において層準ごとに泥岩の色の変化が客観的に確認され,色の層位による変化が如何なる古環境的あるいは続成的差異を反映しているのかを明らかにできれば「色層序学」を樹立することができる. これまでに新潟県加茂地域(中越)・胎内地域(下越)及び房総半島の第三紀泥岩の野外調査・分光測色を実施してきたが,本年度は更に,秋田(男鹿・能代),越中の八尾,会津・出羽の置賜地域,常磐及び掛川での調査を実施した.加茂地域, 胎内地域及び会津・出羽置賜地域,秋田地域とは同じ日本海側で層序も共通するところが多く,明度-色相グラフ上では上部中新統以上がまとまったクラスタをなすという共通する傾向がある.一方で,下位層は層準ごとに特徴的な呈色を示しており,大まかな時階(数my)ごとに対比は可能であるが厳密に色の値としては対比できなかった.これはローカルな堆積環境が寄与して地域ごとの色層序となっているのかもしれない.ただ,傾向としては北ほどa*が赤側またはb*が青側となっており,全体として北ほど珪藻の影響を強く受けた呈色を示している可能性がある. 八尾地域では中新世の珪藻化石帯のDenticulopsis kanayae帯からpraelauta帯にかけてb*がシフトする層準変化が認定できた.このように同じ累層でも色の変化が検知できる場合がある.これはpraelauta帯の一時的な寒冷化と関係している可能性がある. 常磐と掛川はどちらも前弧域に属し,L*a*b*は前年度までにデータの得られた房総半島の泥岩と似た傾向を示す.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前弧域と背弧域とで色の層準ごとの傾向(色層序)が違うことがわかりつつあるが,測色層位が不足している.たとえば房総は累層レベルでは十分な層位で測色データを取得しているが,常磐あるいは掛川では全ての層準を測色したものではなく,限定された層位での予察的な測色であり,実証していくには追加のデータが必要である. 分光データや組成データが蓄積している新潟地域においては,まだ,地球化学データ(CNS)や検鏡による珪藻や陸源砕屑物及び石灰質微化石の定量が不足しており,公表にはまだデータの収集が必要である.
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Strategy for Future Research Activity |
新潟地域に焦点をあて,分析が進んでいないCNS分析と検鏡を終了させ,色と泥岩組成とその原因を解明して公表する.これをもとに,新潟と秋田との比較を行い,南北方向での傾向を明らかにする.まだ,前弧域と背弧域との違いについても別途公表していく.
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