2013 Fiscal Year Research-status Report
高結晶量熔岩の流動則に及ぼす浮遊結晶の影響の実験的検討
Project/Area Number |
25800293
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
石橋 秀巳 静岡大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (70456854)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | マグマ / レオロジー / 結晶 / 火山噴火 / テクスチャー / 斜長石 / 非ニュートン流体 / 粘性率 |
Research Abstract |
高結晶量マグマのレオロジーに及ぼす浮遊結晶の影響を明らかにするため、香川県五色台に産するサヌカイト溶岩の高温変形実験を行った。サヌカイト溶岩は、60vol%の流紋岩質ガラスと40vol%のマイクロライト(主に板状の斜長石結晶と少量の輝石および磁鉄鉱)から構成され、斑晶や気泡をほとんど含まない。また、斜長石マイクロライトはよく定向配列している。この溶岩は、メルトが非常にSiO2に富むために、数時間のタイムスケールでは高温条件下でも結晶作用を進行させない特徴があり、マグマのレオロジーに及ぼす浮遊結晶の影響を検討するのに適した試料といえる。本研究では、東京大学地震研究所の高温一軸変形試験器を利用し、965℃、915℃および865℃の温度、10-2.5~10-5.5s-1の歪速度の条件において一軸圧縮変形実験を行い、そのレオロジー物性データを取得した。併せて、静岡大学理学部のSEMおよび東大地震研のEPMAを用い、実験試料の微細岩石組織の観察も行い、岩石組織的特徴とレオロジー物性の関係を検討した。 本実験条件の下、サヌカイト溶岩は109~1012Pa・sの粘性率範囲を示し、さらに歪速度の増加に対して粘性率が減少するShear thinning流体的ふるまいを見せた。また、メルトの粘性率に対するマグマの粘性率の比で与えられる相対粘度は3つの実験温度で一致し、相対粘度によって結晶の影響が適切に評価できることを示した。相対粘度と結晶量の関係は、先行研究による低結晶量溶岩についての実験で得られた関係式の外挿曲線上に一致した。本実験試料中のマイクロライトはよく定向配列しているが、先行研究によるマイクロライトの量が同等で方位がランダムな試料と比べて著しく低粘性であることがわかった。このことから、マイクロスケールでの結晶の配列が、マグマのレオロジーを支配する重要な要素であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、岩石の低歪速度高温変形装置の開発から行う予定であったが、本研究の実験の一部を行う予定であった東京大学地震研究所において低歪速度高温変形装置が導入されたとこ、また予備調査の段階で優先順位の高い課題がみつかったことにより、研究方針を変更して初年度から高結晶量溶岩の高温変形実験に取り掛かった。この際、実験サンプルの観察・分析の準備を行う上で必要な小型切断機・ダイヤモンド研磨機を前倒しで導入した。結果として、当初の予定よりもやや早い段階で興味深い結果が得られ、次年度に向けて発展させていく足掛かりができたといえる。以上の理由で、研究は概ね順調に発展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究によって、結晶量40vol%までのマグマのレオロジー的性質が明らかにできた。今後、さらに結晶に富むマグマについても変形実験を行い、浮遊結晶がレオロジーに及ぼす影響を明らかにしていく必要があり、そのために実験初生物質に適した、様々な結晶量の溶岩試料を準備する必要がある。そこで以下の3つの方法によって、実験用の溶岩試料を準備する。第一の方法は、天然の溶岩から実験に適した試料を選定する。条件として、斑晶・気泡を含まず、斜長石マイクロライトに富むことが挙げられる。その候補として、富士山・伊豆大島の溶岩を想定している。第2の方法は、上の溶岩を電気炉で加熱して部分溶融させ、実験に適した試料に加工する。これを行うためには、加熱による溶岩の微細岩石組織変化をあらかじめ理解しておく必要があるので、まず予備実験として溶岩の部分溶融実験から開始する。第3の方法は、初年度の研究で用いたサヌカイト溶岩を長時間加熱することで結晶作用を進行させ、その結晶量を調整する。これを行うためには、加熱によってどの程度結晶作用が進行するかをあらかじめ知っておく必要があるので、予備実験としてサヌカイトの加熱実験から開始する。加熱による溶岩の岩石組織変化の詳細な検討は、それ自体が火成岩岩石学の重要な問題である結晶作用カイネティクスの理解につながるものである。以上の方法により準備した溶岩試料を用いて、高温変形実験および実験試料の微細組織解析を行い、更に高結晶量のマグマのレオロジーに及ぼす結晶の影響を検討する。 一方で実験と同時進行で、初年度の研究成果をまとめた論文の執筆作業をすすめる。
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Research Products
(7 results)