2014 Fiscal Year Research-status Report
極端紫外(EUV)光アブレーション粒子計測によるEUVプラズマ特性の解明
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25800303
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田中 のぞみ 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センタ, 特任研究員 (60581296)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 極端紫外(EUV)光アブレーション / 光電離 / プラズマ膨張 / 物質アブレーション / 光量子ビーム応用 / プラズマ加熱 / プラズマ診断 |
Outline of Annual Research Achievements |
25年度に引き続きEUVおよびレーザーアブレーションによるプラズマ膨張に関する研究を継続し、エネルギー吸収から膨張までのアブレーションメカニズムの考察を進めた。更にトムソンパラボラ価数質量分析器を導入し、膨張イオンの価数質量分析を行った。 これまでに、EUVアブレーションの方が膨張イオンの角度分布が狭い分布を示していること、エネルギースペクトルの形状がEUVとレーザーで大きく異なり、EUVアブレーションの場合は指数関数的に減少し、高エネルギー成分を含み、レーザーアブレーションの場合は100 eV付近で急激にイオン数が低下することなどの実験結果が得られている。膨張の理論モデルに含まれる特性エネルギーを比較すると、EUVの方が2-3倍高いエネルギーが得られた。これら実験結果に対し、シミュレーション計算と理論モデルを組み込んだ考察を進めた結果以下のようなアブレーションメカニズムが示唆された。 EUVアブレーションの場合、EUV光はプラズマの低密度領域を通過し、固体表面の浅い領域を加熱するので、面に沿って平板状のプラズマが生成され、圧力勾配方向、すなわちサンプル垂直方向への膨張が起こる。一方レーザーアブレーションの場合、レーザーが到達できる臨界密度はEUV到達点の2桁以上低い低密度領域、つまり固体面から離れた領域で吸収されるので、プラズマより等方に飛散する。また、EUVの場合、横方向膨張(すなわち冷却)が抑制されるので、高い運動エネルギー成分を保存した分布を示したと考えられる。 トムソンパラボラ分析器によるSi及びAlからのEUV及びレーザーアブレーションの膨張粒子の価数質量分析の結果、双方共に、一価のイオンが支配的であることが分かった。 以上の研究結果を国際会議ICPEPA9において2件、及び応用物理学会において1件発表した。また、学術論文を1本発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25年度は前年度のプラズマ膨張に関する考察が深まり、理論モデルやシミュレーション結果を組み込み、多角的に捉えることに成功した。これによりEUV光物質アブレーションによる物質加熱から膨張に至る包括的な特性とそのメカニズムを解明するという本研究課題の目的のうちの大部分、プラズマ生成から膨張に関するメカニズムを明らかにすることができたため順調に研究が進展していると言える。 また、25年度に課題として残った価数質量分析器であるトムソンパラボラ分析器を用いた計測に大きな進展が得られ、膨張粒子の質量と価数が特定されたことが、研究結果をより厳密に議論することに寄与した。 また、チャレンジする予定であったプローブ法に関しては、シミュレーション結果より高密度プラズマが局在している可能性があること、プローブを使用する場合、相当低密度の周辺プラズマのみの計測になることが予測されたため、プローブ法で計測する予定であったプラズマ密度温度の計測は出来ず、干渉法計測に変更して27年度における持ち越されることになった。 尚、4月から7月までの約4ヶ月間、研究代表者が産後休業及び育児休業を取得したため、26年度の研究期間は8ヶ月間となった。
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Strategy for Future Research Activity |
理論モデルの組み込みにより、大まかにはEUVアブレーションメカニズムが分かって来ているものの、プラズマパラメータの計測が不足しているため、27年度は分光法やプローブ法に代わり、可視光レーザーを用いた干渉法による電子密度計測を行う。干渉法を用いることで、電子密度の空間プロファイルやプラズマ形状を得ることができ、用いるレーザーの波長に対する臨界密度以下の領域は原理的に観測可能である。従って、可能な限り短波長のレーザーを計測に用いる。シミュレーション結果より、EUVアブレーションの場合には高密度プラズマが固体付近で局所的に生成されていることが分かっているが、実験的にこのことを確認し、レーザーアブレーションとの違いを比較する。このように、EUVアブレーション、レーザーアブレーション双方の電子密度の空間プロファイルを得ることで、加熱領域の違いを解明することが期待される。 以上で得られた結果を取りまとめ、成果発表を行う。また、3年間の成果を合わせて論文を発表する。
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Causes of Carryover |
当該年度直接経費所要額の1,326,799円を計画的かつ効率的に執行したところ、1,642円の残余が生じ、次年度使用額として繰り越された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H27年度分として請求した研究費(直接経費)は700,000円であるが、当該年度残余1,642円と合わせて計画に沿って使用する。
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Research Products
(5 results)