2014 Fiscal Year Research-status Report
多階層力学系への変分法的アプローチによる高温プラズマの爆発的崩壊機構の理論研究
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25800308
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
廣田 真 東北大学, 流体科学研究所, 助教 (40432900)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 磁気リコネクション / 爆発的崩壊 / 多階層性 / 電磁流体力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
プラズマ物理学において、速い「磁気リコネクション(磁力線のつなぎ換え)」現象のメカニズムを解明することは、半世紀以上の歴史がある重要課題である。特に、太陽フレアや地球磁気圏サブストームをはじめ、核融合反応炉を目指す磁場閉じ込めプラズマは高温・希薄であるため電気抵抗が非常に小さく(無衝突)、電子慣性やホール効果、有限ラーマー半径効果といった様々な微視的スケールの複合的な寄与を考慮しないと、観測されるリコネクション速度を説明できないと考えられている。微視的スケール(電子の慣性長)で起こる磁力線のつなぎ換えが引き金となって、巨視的な磁場や流れ場が劇的に変化するという意味で、この現象は多階層問題であり、直接数値シミュレーションや厳密な数学解析は依然として困難である。 本研究では「電子慣性」と「電子温度(ホール効果)」の微視的効果だけに絞ったシンプルなモデルを考察する代わりに、空間方向に数千から1万程度の計算格子を用意した非常に高解像度の直接数値シミュレーションを行なった。これにより、計算領域の1%以下のサイズの電子慣性長スケールで生じる磁気リコネクションが、非線形段階において爆発的に加速し、最終的には巨視的な磁場エネルギーの大部分がプラズマの運動エネルギーへと変換されることを示した。特に、爆発的加速段階ではX型の境界層(電流層&渦層)が、リコネクション点の近傍で局所的に形成され、それが急速に拡大していく様子が見られた。 次にこの数値計算結果に基づいて、爆発的成長速度のスケーリングを説明する非線形理論モデルを構築した。これは磁気エネルギーを最も効率的に解放するような変位を求めるという変分法のアイデアを用いており、厳密解を得る事が困難な問題に対してスケーリング則を見積ることができる有用な方法であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モデルを拡張していくという計画に対してはやや遅れているが、爆発的な磁気リコネクションを説明する理論構築の面で、新しい成果を得ることができた。電気抵抗に起因する遅い磁気リコネクションに対しては、ラザフォード理論(1973)によってほぼ解明されているが、無衝突プラズマの速い磁気リコネクションに対して、本研究はそれに近い理論的貢献をしたと期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
爆発的な磁気リコネクションの基本的なメカニズムは、これまで解析した2-fieldsモデル(渦度方程式と一般化オーム則)で捉えることができたと考えられるが、さらにモデルを一般化して3-fields、4-fieldsモデルの解析を行う。物理的には反磁性効果や磁気音波との相互作用が加わり、問題は複雑になるが、依然として爆発的な磁気リコネクションが起こることが予想される。これらのモデル方程式はハミルトン形式をもつことが近年詳細に調べられているので、まずは線形不安定性に対して変分原理が成り立つかどうかを解析する。
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Causes of Carryover |
本年度の成果を論文にまとめ、Physics of Plasmas誌に投稿したが、本年度中に掲載確定までには至らなかったため、未使用額が生じた。また、別予算の「頭脳循環を加速する若手研究者戦略的海外派遣プログラム」により、本年度の大半を米国で長期滞在したため、日本国内の学会発表を行わず、国内出張旅費が未使用となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文については次年度に掲載が決まれば、そちらに使用する。次年度は日本に帰国するため、日本の学会や研究会で成果を発表するために未使用額を使用する。
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