2013 Fiscal Year Research-status Report
錯体構造の揺らぎを考慮したレアメタル回収キレート剤の理論設計指針の探索
Project/Area Number |
25810002
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
森 寛敏 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 准教授 (90501825)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 第一原理分子動力学 / レアメタル / キレート捕捉剤 / 分子揺らぎ |
Research Abstract |
金属イオンとキレートの親和性は,HSAB 則により説明される.だがHSAB則によるレアメタルキレート回収材の設計には,しばしば困難が伴う.例えばPd2+回収用のキレートでは,ソフトな硫黄ドナーとハードな酸素ドナーを併せもつキレート「SuperLig」が最も良いPd2+回収効率を与え,HSAB 則に合わない.本研究の目的は,我々の生活を支えるレアメタルのキレート回収効率向上を狙った,金属イオンとキレート分子の動的相互作用の理論的解明である. クラウンエーテルとアルカリ金属(Na+,K+,Rb+,Cs+)の親和性は,エーテル環のサイズに依存するが,単純にエーテル内径とイオン半径のマッチングだけで決まっている訳でもないことも知られている.これは,クラウンエーテルが最も金属と強く相互作用できるよう柔軟に構造を変化させることができるためである(induced fit).従って,SuperLigによる遷移金属の親和性考察の際も,構造変化の効果は無視することができない.研究初年度はこれらを鑑み,上記SuperLigによるPd2+イオンの捕捉特性をCPMD法でシミュレーションし,クラウンエーテルおよびチアクラウンエーテルと比較検討した.検討の結果,SuperLigのPd2+結合自由エネルギーはクラウンエーテルおよびチアクラウンテーテルに比べ大きいことが分かった。これは,遷移金属を捕捉するキレート剤の設計に,揺らぎの効果を無視できないことを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の段階でSuperLigのPd2+親和性の再現をすることができ,研究は計画通り進捗している。あわせて,CPMDの結果から,Pd2+を安定に捕捉するには少なくともキレートヘテロ元素(OもしくはS)を5つ以上もつことも明らかとなっており,次年度の更なる解析に繋げることができた。現在もっとも良いPd2+捕捉能力をもつキレートとされるSuperLigでは,Pd捕捉原子としてOを4つとSを2つもつ構造が使われているが,それらの最適な配置に関する理論的考察がこれからの課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
SuperLigのO/S原子配置を変えた異性体について,同様なPd2+の結合自由エネルギー解析を行う。得られた結果を,初年度の結果と比較することで,ドナー原子の配置がキレート分子の揺らぎ効果に与える影響を検討する。既に,SuperLigのPd2+捕捉に関する優位性の再現には成功しているので,次年度はアグレッシブに理論的な分子構造設計により,更にPd2+捕捉を有利に行うことが可能なリガンド設計としてN原子などヘテロ元素を配位元素にもつキレート剤のシミュレーションも行う。また,実在系においてPd2+をキレート捕捉する際には,Pd2+に加え,様々なイオン種の共存条件下,Pd2+を選択的に捕捉できることが望ましい.この観点から,多イオン種の混在条件下でのキレート捕捉分子動力学シミュレーションを行うことで,選択的Pd2+捕捉に必要なキレート構造を理論的に探る。
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Research Products
(6 results)