2014 Fiscal Year Annual Research Report
励起エネルギー移動理論の大規模化の実現と生体分子への応用
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25810004
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
藤本 和宏 神戸大学, システム情報学研究科, 講師 (00511255)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 量子化学 / 励起状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
フェルスター理論が発表されて以降、励起エネルギー移動に関する数多くの理論的研究が行われてきたが、その研究対象は双極子-双極子近似などによって電子的カップリング(光励起・脱励起に関わる電子の相互作用)の計算が可能な系に絞られてきた。励起エネルギー移動の研究対象を従来よりも広げられるよう、本研究では電子的カップリングに対する新たな計算手法(TrESP-CDQ法)の開発を行った。この手法では、静電ポテンシャルフィッティングによって求めた遷移電荷、遷移双極子、および遷移四重極を用いて電子的カップリングを計算している。本手法では古典的に相互作用を記述するため、非常に簡便に電子的カップリングの計算を行うことができる。さらに本手法の計算精度は、量子的に相互作用を記述する手法(たとえば我々が以前に考案したTDFI法)と比べても引けを取らない。 これまでに電子的カップリングの計算手法がいくつか提案されているが、古典的手法では計算精度の低さが、量子的手法では高い計算コストが問題となってきた。本手法では低い計算コストでありながら量子的手法と同等の精度で電子的カップリングを計算することを可能とした。また、本手法では6種類の相互作用(電荷-電荷、電荷-双極子、電荷-四重極、双極子-双極子、双極子-四重極、四重極-四重極)によって電子的カップリングを記述しているため、これらの相互作用の個別計算によって電子的カップリングの分割解析が可能である。以上のように、本研究で開発したTrESP-CDQ法は励起エネルギー移動の研究に対して非常に有用だと考えられる。
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