2014 Fiscal Year Research-status Report
電子スピンをプローブとした二分子膜界面束縛水の電子伝達機構解明
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25810009
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
三浦 智明 新潟大学, 自然科学系, 助教 (80582204)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 光誘起電子移動 / 巨大磁場効果 / 二分子膜 / スピンダイナミクス / 分子運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
非イオン性界面活性剤とコレステロールによって構成される二分子膜Niosomeに疎水性ポルフィリン(ドナー)と両親媒性ビオロゲン(アクセプター)を添加した系において、長寿命ラジカル対および巨大磁場効果を観測した。寿命および磁場効果の支配因子を実験的に明らかにするために、温度依存性、コレステロール濃度依存性、ビオロゲンのアルキル鎖長依存性、およびポルフィリンの中心金属依存性を検討した。また、実験結果を解析するために、2-site Liouville方程式を用いたシミュレーションプログラムを開発し、ラジカル対ダイナミクスの解析を行った。ここから以下のことが明らかとなった。(1) 電子移動はNiosomeの親水性PEG鎖領域で起こっており、コレステロールの存在する疎水部の影響は限定的である。(2) 巨大磁場効果はラジカル対が再結合確率の高い領域と低い領域との間をマイクロ秒オーダーの遅いタイムスケールで行き来している事に起因している。(3) 高磁場における磁場効果の飽和値は、主にポルフィリンのスピン軌道相互作用に起因する、非磁場依存性スピン緩和に支配されている。(4) ビオロゲンとの電子移動速度および生じたラジカル種のバルク水相への散逸速度はビオロゲンの疎水性に強く依存する。 以上から、本系における電子移動・磁場効果の支配因子として膜界面PEG相におけるラジカル対の遅い分子運動が重要であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
界面束縛水の影響を明らかにするには至っていないが、膜界面における電子移動・巨大磁場効果の支配因子を定性的に明らかにすることに成功したため、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
温度依存性の精密測定のための装置改良を行うとともに、分子動力学を用いた検討により界面束縛水の影響を明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
電荷分離状態の寿命および磁場効果が温度に強く依存することが分かったが、現在の温度可変装置は5度程度の温度誤差があり、理論計算によって求まる速度定数を解析する上で不確定性を生じることが明らかとなった。そこで次年度においてより精密に温度コントロールを行うための装置改良を行う必要が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
測定セルの周りに温度調節した窒素ガスを流して保温するための石英二重管、それに伴う光軸調整のための光学部品等を購入する。
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Research Products
(4 results)