2013 Fiscal Year Research-status Report
相対論的量子モンテカルロ法の開発と内殻励起への応用
Project/Area Number |
25810016
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中塚 温 独立行政法人理化学研究所, 計算科学研究機構, 特別研究員 (80591065)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 量子モンテカルロ法 / 分子科学 / 相対論効果 / 並列計算機 |
Research Abstract |
平成25年度は、主にスピン-軌道相互作用の取り込みのためのプログラム修正、原子核に働く力を計算するためのエネルギー微分コードの導入を行った。 スピン-軌道相互作用はspin-freeの項と異なり、二成分の複素波動関数をベースとする必要がある。所属研究チームで開発している分子軌道法プログラムとの接続の容易さから、基底関数は実数表現を用い、複素数の分子軌道係数を用いる方式で実装した。スピン-軌道相互作用の大きさは多くの場合、エネルギー全体に対してごくわずかであるため、高精度に見積もるためには精度の良い試行波動関数を用いる必要がある。このためのカスプ補正法として、電子成分にのみ、これまでに開発したZORAカスプ補正法をかけているが陽電子成分の大きな場所でスピン-軌道相互作用の局所値が大きくなり、統計が不安定になる。より詳細に局所エネルギー及びその中でのスピン-軌道相互作用項の振る舞いを調べるため、スピン変数まで考慮した局所エネルギー面をスキャンする機能を追加した。 エネルギー微分に関しては、ZORA Hamiltonianに基づく式の導出を行うと共に、zero-variance principleに基づく非相対論的エネルギー微分コードの実装を行った。エネルギーの核座標微分は、核座標微分演算子の期待値であるHellmann-Feynman項と、波動関数の核座標微分に依存したPulay項からなり、計算の複雑さ、計算量的には後者が大部分を占める。本課題でのPulay項の実装では、核座標微分が多くの場合、多数存在する原子核全てに対して計算する必要があることを利用し、原子核ループを内側に寄せることで、LAPACKのDGEMVルーチンを利用できる形での効率的な実装を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画期間の一年目に予定していた課題については、汎用的だがプログラム上の修正範囲の狭い基底関数の調整を二年度目以降に移し、スピン-軌道相互作用の取り込みに必要となるプログラム整備に限定した。一方、翌年度以降を予定していたエネルギー微分の実装について、非相対論での実装を行い、プログラム構造の事前検討を行ったため、計画期間全体の課題の進捗は、おおむね順調と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的なプログラムコードは完成したが、スピン-軌道相互作用の高精度な計算のためにはその局所値の理解と適切な対応が必要に思われる。そのため、いくつかの開殻系の基底状態や励起状態試行関数に対して局所値の解析を行い、陽電子成分に対するカスプ補正などの計算安定化手法の検討を行う。また、ZORA Hamiltonianに対するエネルギー微分コードを実装し、計算の効率化を行う。加えて本年度から、ZORA法以上の高次相対論手法への拡張を検討する。
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