2013 Fiscal Year Research-status Report
テレフタルアミドを基本骨格とした動的プロペラ型ホストによるキラリティ創出
Project/Area Number |
25810017
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
上遠野 亮 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (60432142)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | テレフタルアミド / ホスト-ゲスト / 分子プロペラ / 立体特異的構造変化 / らせん性反転 / 面不斉 |
Research Abstract |
超分子キラリティを研究するための新たな分子足場の創出を目的として、動的なプロペラ型分子1および2を設計・合成した。これらは、1では一つのベンゼン環の周囲に、2では上下に重なった二つのベンゼン環の周囲に、それぞれ三つのテレフタルアミド部分を配した3回対称性分子である。 分子1の合成は市販の出発物質より11段階で達成した。最終段階における三重の薗頭カップリングは低収率にとどまったが、単環性部分構造の合成検討の過程で、新たな大環状化合物の生成を見出した。これはテレフタルアミドの動的特性に基づいた折りたたみ可能な分子であり、折りたたみの過程において新たな動的らせん性を発現することを見出した。分子2の合成は、二つの経路より達成した。一つは、二層構造の各層を三重の縮合反応により一挙に連結する方法で、単段階で達成された。この方法は、より高次の階層構造構築にも適用可能であると期待できる。もう一つは、六つのアミド基上に二つの異なる置換基を適宜導入可能な経路であり、特異な面不斉を有する分子をラセミ対として与えた。 溶液中における分子1および2の構造は、NMR、吸収スペクトル、CDスペクトル等の分光学的手法により考察し、配座探索によっても支持された。1は、ゲスト分子の非存在時、非プロペラ型の構造をとり、キラルなゲスト分子との錯生成に際し、一方のねじれを優先させたプロペラ構造へと変化することを見出した。この構造変化は、キラルゲストの一方のエナンチオマーによってのみ誘起され、その対掌体に対しては錯体を形成しても、構造変化を示さなかった。2は、ゲスト分子の非存在時、一方のねじれ方向を優先したプロペラ構造をとっており、キラルなゲスト分子との錯形成に際し、反対のねじれ方向を優先させた。動的なプロペラ構造において、以上のような立体特異的構造変化、または、らせん性反転を達成した例はこれまでに知られていない。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で計画していた動的プロペラ型分子1および2は、いずれも合成を完了した。ここで確立した合成手法は、新たな分子設計へとフィードバックされることが十分に期待できるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
26年度に計画している超分子的な階層的集合に加え、有機合成的手法によってのみ達成が見込まれる階層的構造の設計を併行して行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
年度末での発注は、納期が年度をまたぐ可能性があったので控えたため、わずかな残額を生じた。この残額は、総額に比して概ね計画通りの執行だったと考える。 26年度にて速やかに使用する。
|
Research Products
(7 results)