2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25810028
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
高石 和人 成蹊大学, 理工学部, 助教 (70513430)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | キラリティー / 大環状化合物 / 軸性不斉 / ビナフチル / 超分子 / シクロファン / キロプティカル特性 / 組井桁 |
Research Abstract |
井桁の構成成分 (4本の棒) の上下を互い違いに組んだ構造は、家紋学で組井桁 (くみいげた) と呼ばれている。組井桁は内部に空洞を持つ D4 対称構造であり、組む方向の違いにより二種類の鏡像異性体が存在する。有機化合物として本骨格を構築できれば、新しい topological chirality を持つ化合物の提唱になり、新しい機能の付与が期待できる。本研究では、構成成分 (棒) の数に関わらずこの種の化合物を組井桁型化合物と呼ぶ。この構造を上から見て斜めの棒が手前から奥に向かう際、その方向が時計回りになるキラリティーを P, 反時計回りになるキラリティーを M と定義した。 研究者らは軸性不斉 1,1’-ビナフチル骨格とビフェニル骨格を –CH2O- を介して交互に環状に連結することで組井桁型化合物の合成を行った。(S)-ビナフチルを用いれば (P)-体が、(R)-ビナフチルを用いれば (M)-体が得られる。 (1) まず、4,4’-ビフェニル骨格を有する (P)- および (M)-組井桁型化合物を one-pot で合成し、ビナフチル骨格とビフェニル骨格をそれぞれ 2~7 つずつ持つ目的化合物を得た。DFT 計算や各種スペクトルによりこれらの三次元構造の予測を行い、平均化された構造は Dn 対称体であることを確認した。また、吸収、円二色性強度と構成成分数の間には加成性が成り立っていた。 (2) さらに、ビフェニル骨格の結合位置を 4,4’-位から 2,2’-位に変更した化合物の合成を行った。これらの化合物は one-pot ではほとんど得ることができなかったため、逐次合成を検討した。その際には保護基を用いず、試薬の当量や反応条件を調整した。結果として、ビナフチル骨格とビフェニル骨格をそれぞれ 2~4 つずつ持つ化合物が得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的化合物の一つである、ビナフチル骨格とビフェニル骨格を -CH2O- を介して結合させた組井桁型化合物の合成を達成した。当初の予定では、それぞれの骨格 3~5 つずつから成る化合物を得る予定であったが、それらに加え、より大きな 6, 7つずつから成る化合物を得ることができた。その結果、構造や物性を系統立てて調査し、考察することができた。これらについては既に学術論文として発表した。また、この種の化合物について、保護基を用いずに逐次的に合成する手法を見出した。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず既に合成を達成した組井桁型化合物について、不斉空洞を利用したホスト分子としての利用を試みる。カチオンおよびπ電子豊富なゲスト分子のサイズ、エナンチオ、ジアステレオ選択的包接を試みる。また、ビナフチルとビフェニル間にリンカーを持たない組井桁型化合物の合成および機能化に取り組む。構成成分の数やビフェニル骨格の結合位置の違いにより内部空洞の径や深さが異なるため、合成した化合物はそれぞれ特有の機能化展開ができうる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試薬やガラス器具等の消耗品を使用する実験について、当初の予定より効率的に進行させることができたため。 消耗品 (試薬、ガラス器具) として約1,000千円、旅費として300千円、その他 (機器使用料、英語論文校閲) として約300千円を予定している。
|