2014 Fiscal Year Research-status Report
マグネシウムカルベノイドの特異な反応性を利用する環状アルケンの合成
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25810030
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
木村 力 東京理科大学, 理学部, 講師 (40452164)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | マグネシウムカルベノイド / 求核性 / 求電子性 / 環化反応 / DFT計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度では、分子内に求電子性官能基を有する環化反応前駆体の合成及び環化反応前駆体から発生させたマグネシウムカルベノイドの求核的環化反応によるα-ハロブテノライドの合成について検討した。α-ブロモケトンとクロロメチル p-トリルスルホキシドから3位にヒドロキシを有する1-クロロ-1-アルケニル p-トリルスルホキシドを合成した。この化合物にピリジン存在下クロロギ酸フェニルを反応させて炭酸エステル骨格を有する環化反応前駆体を合成した。環化反応前駆体にi-PrMgClを反応させると期待通り環化反応が進行し、シクロペンテン骨格を含む化合物であるα-ハロブテノライドが生成した。環化反応前駆体には2種類の幾何異性体が存在するが、どちらの異性体からもα-ハロブテノライドが得られることがわかった。 窒素原子に隣接するC-H結合へのマグネシウムカルベノイドの挿入反応による環化反応についても検討した。2位にN,N-ジアルキルアミノメチル基を有する1-クロロシクロプロピルp-トリルスルホキシドを合成し、i-PrMgClを反応させた。その結果、シクロプロピルマグネシウムカルベノイドが窒素原子に隣接したC-H結合に挿入し、5員環骨格を含む3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンが生成した。この挿入反応は級数の高いC-H結合で優先的に進行することを明らかにした。光学活性なp-トリルスルフィニル基を不斉補助基として利用する不斉合成にも成功した。金属カルベノイドのC-H挿入反応は骨格転位反応の一つとして解釈されているが、C-H挿入反応の機構をDFT計算で調べたところ、カルベノイドが求電子剤、C-H結合が求核剤としてはたらく求核置換反応に端を発することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
環化反応前駆体の合成とその前駆体から発生させたマグネシウムカルベノイドの求核性を利用した環化反応によるα-ハロブテノライド合成に成功している。また、マグネシウムカルベノイドの求電子性を利用したC-H挿入反応による3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンの合成にも成功している。さらに、DFT計算によりマグネシウムカルベノイドのC-H挿入反応のメカニズムを明らかにしている。
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Strategy for Future Research Activity |
様々な求核性官能基および求電子性官能基を有する環化反応前駆体を合成して環化反応を検討する。環のサイズや環上の置換基の種類に着目して基質適応範囲を精査する。DFT計算を用いて金属カルベノイドの特異な反応性の解明をさらに進める。
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Causes of Carryover |
合成実験が想定以上に順調に進行し、試薬やガラス器具等の消耗品がが少なめで済んだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越金を試薬およびガラス器具の購入に充て研究を推進する。
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