2015 Fiscal Year Annual Research Report
マグネシウムカルベノイドの特異な反応性を利用する環状アルケンの合成
Project/Area Number |
25810030
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
木村 力 東京理科大学, 理学部, 講師 (40452164)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | マグネシウムカルベノイド / カップリング反応 / 環化反応 / DFT計算 / シクロアルケン |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度では、マグネシウムカルベノイド同士のカップリング反応によるシクロアルケン合成の基質適用範囲について検討した。これまでの研究から、炭素鎖が5のビス(α-クロロスルホキシド)からシクロペンテンが得られることがわかっているので、炭素鎖が3および6のビス(α-クロロスルホキシド)を環化反応前駆体として用いてカップリング反応を試みた。炭素鎖が3および6の環化反応前駆体を合成し、それらとi-PrMgClを反応させたところ、期待通り環化反応が進行しシクロプロペンおよびシクロヘキセンが中程度の収率で生成した。この反応では、マグネシウムカルベノイド同士の分子内求核置換とそれに続くβ脱離により環が形成されるが、この反応パターンを応用して、求核置換とそれに続く求核付加による3員環形成についても検討した。α-クロロアルキルスルホキシドとi-PrMgClから発生させたマグネシウムカルベノイドにリチウムエノラートを反応させると、目的の環化反応が進行しシクロプロパノールが中程度の収率で生成した。この反応を光学活性なスルホキシドを用いて行ったところ、中程度の光学純度でシクロプロパノールが得られた。 マグネシウムカルベノイドは、有機金属化学種であるにもかかわらず求電子性を示す。この特異な反応性を解明するために、マグネシウムカルベノイドの構造をDFT計算を用いて調べた。既にα-ハロビニルマグネシウムクロリドの構造が典型的な有機分子の構造から逸脱していることを明らかにしているが、α-ハロアルキルマグネシウムクロリドやα-ハロシクロプロピルマグネシウムクロリドもまた、長い炭素-ハロゲン結合をもち、カルベノイド炭素周りの結合角が典型的な有機分子の構造から逸脱していることがわかった。これらの構造的特徴がマグネシウムカルベノイドの特異な反応性に寄与しているとみられる。
|