2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25810034
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宇部 仁士 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00512138)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 貨幣金属錯体 / 有機金属化合物 / 複核錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では炭素をテンプレートとする貨幣金属クラスターとして、金(I)錯体を用いた有機金属クラスターの合成を目指す。本年度は主に金(I)の芳香族化合物への配列について、特に1,2-金(I)二置換ベンゼンの合成について検討を行った。 アリールホウ酸、およびホウ酸エステル誘導体と金(I)ホスフィン錯体との金属交換反応によりアリール金(I)化合物が生成することが知られている。1,2-ホウ酸エステル二置換ベンゼンを出発原料とし、種々のホスフィン配位子を有する金(I)ホスフィン錯体との金属交換反応を試みた。その結果、ホスフィン配位子上の置換基を適切に選択することにより、1,2-金(I)二置換ベンゼンの合成に成功し、各種NMR測定および単結晶X線結晶構造解析よりその生成を確認した。これまでにオルト二置換アリール金(I)化合物を合成する一般性の高い手法は開発されておらず。芳香環に自在に金を配列する手法になると期待される。 また、効率的な1,2-金(I)二置換ベンゼンの形成を期待し、ビス(ホスフィン金(I))化合物を用いたところ、配位子により二つの1,2-金(I)二置換ベンゼンが架橋された環状型四核錯体が形成することを見出し、単結晶X線結晶構造解析より固体中における構造を明らかとした。 さらに、1,2-金(I)二置換ベンゼンへ金(I)錯体を添加すると金(I)錯体が付加反応を起こすことがNMRおよび質量分析より示唆された。このことは、本研究で開発した1,2-金(I)二置換ベンゼンが貨幣金属集積のテンプレートとなることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ベンゼン上で近接する金(I)の一般性の高い手法を開発したことにより、種々の芳香族化合物に対する自在な金(I)の導入への道が開かれた。また、二座のホスフィン配位子を用いることでアリール金化合物を基盤とする大環状四核金錯体が形成することを見出した。本化合物はその構造を反映した新規な物性や金属の集積場としての展開が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度開発した1,2-金二置換ベンゼン合成の手法を他の多置換アリール金(I)化合物へと展開する。特にすべての水素が金(I)へ置換された六置換ベンゼンの合成およびその物性を明らかとする。また、種々のビスホスフィン配位子を用いて大環状多核金錯体を合成し、その物性および金属集積について検討を行う。
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Causes of Carryover |
金がベンゼン環に1,2-二置換した二核の金(I)錯体合成のため、ジホスフィン配位子に一下の金イオンが二つ配位した前駆体を用いてベンゼン誘導体との反応を検討したところ、予想に反し二核錯体ではなく大環状構造を有する二量体の四核金錯体が得られることが明らかとなった。この化合物の構造や分光学的な性質、および類似のジホスフィンを用いた際の構造に関する知見を得るために研究の完了が困難となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験の遂行に必要となるジホスフィン配位子、金塩を始めとする薬品代および消耗品代として使用する。また事業全体で得られた成果を発表する旅費および印刷費が必要となる。
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