2013 Fiscal Year Research-status Report
200度を超える中温域で高いプロトン伝導能を有する配位高分子の創成
Project/Area Number |
25810047
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
犬飼 宗弘 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 研究員 (60537124)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | プロトン伝導 / 固体電解質 / 燃料電池 / 固体NMR |
Research Abstract |
固体中でプロトンが動くプロトン伝導体は、燃料電池用の固体電解質として期待されている。本申請では、有機物と無機物のハイブリッドである配位高分子に着目して、中温域(200-400℃)で0.1 S/cm を超えるプロトン伝導を示す配位高分子の合成を研究目的とした。これまでに得られた知見を元に[金属イオン,アゾ-ル系分子,リン酸]を基本方針とし 、系統的に合成を行うことで、10を越える新規化合物が得られた。その中には、150℃で0.01 S/cmを越える超イオン伝導性を示す配位高分子、また約240℃で安定に伝導度を示す配位高分子が含まれている。それらの化合物を各種分光法により、伝導度、耐熱性向上のメカニズムを解析し、合成指針に関する基礎的な知見の獲得を試みた。 得られた化合物の一つ[ImH2+][Cu(H2PO4)2Cl]•H2Oは、熱処理をすることで150-170℃の温度域で約0.02 S/cmの超イオン伝導を示した。CsHPO4などの固体酸と並び、中低温域、無加湿環境下で最も高いプロトン伝導度である。そして複数の解析を組み合わせることで、熱処理により配位高分子が低結晶化し、低結晶化により劇的にプロトン伝導度が向上することが明らかとなった。 またイオン性の分子から組み上がる [EtMeIm]2[Zn(SO4)2]は、270℃まで結晶構造が安定であり、240℃で0.1 mS/cmの伝導度を示した。強い分子間相互作用が非常に高い耐熱性をもたらしたと考えられ、耐熱性向上に関する合成指針の一つを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は「中温域(200-400℃)で0.1 S/cmを超えるプロトン伝導能の発現」であり、平成25年度の研究計画は1. 耐熱性を有するプロトン伝導性配位高分子の合成・評価2. 中温域におけるプロトン伝導挙動のin-situ解析を可能とするNMRの装置開発・改良である。 耐熱性に関しては、190~240℃で安定にプロトン伝導性を示す化合物が複数得られており、強い分子間相互作用が耐熱性向上に関する合成指針であることを明らかした。 NMRの装置開発・改良に関しては、超高速マジック試料回転(MAS)NMRに注目し、研究を進めている。試料を70~110 kHzの速度で回転させる超高速MAS NMRは、固体材料の1H NMRスペクトルを高分解能化し、プロトン伝導体のプロトンを位置・運動を評価できる強力な固体電解質の解析方法の一つである。超高速MAS NMRによる配位高分子のみならずプロトン伝導体の解析は世界で初めての試みとなる。測定・解析により、配位高分子の低結晶化がプロトン伝導度向上に寄与していることを明らかにした。 以上、目的達成にはあと一歩至っていないが、計画通り研究は進んでおり、また加えて伝導度向上の合成指針も得ることができた。よって「当初の計画以上に進展している」とする。
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Strategy for Future Research Activity |
申請書の計画に沿い、これまで得られた「強い分子間相互作用を利用した耐熱性向上」、「低結晶化を利用した伝導度向上」などの設計指針を組み合わせることで「高い耐熱性と伝導性を両立する配位高分子の創成」を実施していく。加えて、伝導度の底上げにも取り組んでいく。すでに予備実験を実施しており、結晶内に酸性分子であるリン酸を注入する取り組みを行っている。伝導度は100倍以上向上し、150℃で0.01 S/cmを越えるプロトン伝導度を示した。超高速MAS NMR解析により、結晶内に埋め込まれたリン酸は、水素結合の脆弱化を引き起こし、プロトン及びに錯体骨格全体の運動性を向上させることが明らかとなった。上記の指針を取り入れた測定・合成を系統的に実施し、伝導メカニズムを深く考察し合成指針へフィードバックすることで、本申請の目的である200-400℃で10-1 S/cm 以上のプロトン伝導を示す配位高分子を創成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
加熱用の制御ヒータを無償で得ることでき、購入を見送ったためである。 当初の計画にはなかった超高速マジック角試料回転NMR実験を進めていく予定である。その実験に関する消耗品(備品費、薬品代)、出張費に回す予定である。
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Research Products
(5 results)