2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25810049
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
向井 貞篤 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30371735)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 表面・界面 / 非平衡開放系 / パターン形成 / コロイド |
Research Abstract |
平成25年度は、コロイド分散液の乾燥パターンの基本的な観察と、乾燥パターンを変化させるために用いる集光レーザー装置の構築を行った。 液滴を展開する基盤の親水・疎水性を制御することで、得られる乾燥パターンが変化することが分かった。直径1μmのポリスチレンラテックス粒子を超純水に分散させ(0.09 vol%)、カバーガラス上に100 μl滴下し乾燥した。空気の流れや湿度変化の影響を減らすため蓋をしたシャーレ内で乾燥させ、乾燥パターン形成を観察した。ガラスはエタノールで洗浄しただけのものと、オゾン処理により表面を浄化し親水性を高めたものを用いた。乾燥パターンの形状や構造は、単純な目視、および倒立型光学顕微鏡を用いて観察した。親水化したガラスの場合、ガラス面上への滴下の時点で分散液が薄く大きく広がり、接触線が長くなった。さらにピン留め効果により乾燥時も接触線がほとんど移動しないことから、乾燥後の粒子密度が低くなった。また接触角が小さいことから、接触線近傍では液膜が薄く、多重積層構造をとりにくくなった。これらの要因により、親水基盤では、やや幅が狭く単層な領域が広い構造が形成された。 形成される乾燥パターンを新規材料として利用するためには、層の厚さの制御が重要であり、広い面積にわたって均質な構造を形成する必要がある。今回の検討により、多重積層構造の形成を抑えるためには、基板を親水化することが効果的であることが分かった。より広い面積で均質な構造を形成するためには、温度や湿度などの外的環境や、エタノールなどの添加による界面張力の変化など、更なる条件の制御が必要であると考えられる。 高い拡張性を有する集光レーザー光学系を倒立顕微鏡に組み込み、レーザートラップも可能な装置を構築した。本装置を用い、液滴乾燥時に発生する対流を制御することに成功し、乾燥パターンの変化を観察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度は、コロイド分散液の基本的な乾燥パターンの観察、および、液滴内部の流れ制御のための集光レーザー装置の構築と、その装置を用いた乾燥パターンの研究を予定していた。 まずは基盤の親水・疎水性が乾燥パターン形成に与える影響を検討した。乾燥パターンの形状や構造は、単純な目視、および、倒立型光学顕微鏡を用いて観察した。滴下した液滴が同量であっても、基板の親水・疎水性により、滴下直後の液滴の形状や面積が異なった。その結果、親水表面の方が制御された乾燥パターン形成に適していることが分かった。 一方で、集光レーザー装置の構築に関しては、当初計画では既製の装置(シグマ光機社製・光ピンセットMini)の導入を予定していた。しかし、既製装置は完全に部品が固定されており、ユーザー側での変更の余地が全くなく、将来的なレーザー焦点の時空間変化や、多点化などの機能拡張が困難であった。このことから、限られた予算を有効に活用し、今後の研究の発展に対応しうる拡張性を装置に持たせるため、レーザー光源、および光学部品を個々に購入し、光学定盤上に装置を自作することにした。その結果、光学系の設計、部品の選定、組み立て、調整に当初の想定以上の時間を必要とし、集光レーザーを用いた乾燥パターン制御の実験に若干の遅れが生じる結果となった。 今年度構築した集光レーザー装置は、当初導入を予定していた既製装置と同等以上の性能を有している。また全ての光路系にアクセスし、構成を自由に変更することが可能であり、拡張性が非常に高い装置となっている。以上より、使用する装置の問題は完全に解決しており、今後の研究は加速度的に発展し、この遅れは十分に取り戻せると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
コロイド分散液の乾燥時に形成される微粒子集積構造の制御について研究を行う。 平成25年度に得られた基礎的な知見を元に、今後はサイズの異なる粒子の輸送挙動の違い、粒子の形状の影響、粒子表面の修飾の違いによる輸送挙動の変化を調べる。特にこれら性質の異なる粒子の混合系について検討し、性質の異なる粒子混合系の分離パターン形成について調べる。また、エタノールや界面活性剤など、界面物性を変化させる物質を添加することで、得られる乾燥パターンがどのように変化するか調べる。 集光レーザーによる、性質の異なる粒子の乾燥パターン制御について、集光レーザーの位置や強度を変化させて、検討を行う。光を吸収する材料の使用や液滴を展開する基盤の加工、レーザーの多点化など、液滴乾燥時の内部の流れを制御する試みを検討する。粒子サイズによる分離パターンの形成に着目し、その制御を試みる。 得られた乾燥パターンの評価については、目視による構造色の確認や光学顕微鏡による観察を基本とするが、蛍光標識した試料を用いた走査型共焦点レーザー顕微鏡による3次元構造観察も検討する。また小さい粒子を用いる場合は、必要に応じて原子間力顕微鏡や走査型電子顕微鏡などの微細構造分析を行う。これらの微細構造分析に必要な装置類については、学内の共同利用施設を利用することで対応する。 高分子溶液の乾燥パターンに関しても、同様に集光レーザーを用いてパターン形成を制御する研究を実施し、本手法の汎用性について検討する。得られた乾燥構造を光学顕微鏡、偏光顕微鏡、走査型電子顕微鏡などの様々な手法で観察し、新規材料としての評価を行う。また、必要や強度に応じて、引っぱり試験等の力学試験を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画に予定していた国内学会への参加を取り止めたことから、旅費として計上していた予算が未使用となった。また集光レーザー装置を、既製品ではなく、個々の部品を購入し組み立てた経緯から、集光レーザー装置の構築に使用した金額に、当初計画からの差額が発生した。 これらの理由により、平成25年度は一部予算が未執行となったが、執行金額に計画からの大きな変更はない。 平成25年度から繰り越した予算は、集光レーザー系に追加する光学部品、および、レーザーの光軸調整に必要な治具の導入に使用する。また平成26年度の予算は、予定通り、消耗品の購入と、電子顕微鏡等の共同利用設備使用料、国内外の学会参加費、論文投稿費用に当てる予定である。平成25年度から繰り越した予算は少ないため、平成26年度もほぼ計画通りの予算執行となる。
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