2014 Fiscal Year Annual Research Report
PCET反応を動作原理とする新規自己組織化有機薄膜半導体の開発
Project/Area Number |
25810050
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
平尾 泰一 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50506392)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 有機導体 / 電子・電気材料 / 分子性固体 / 構造・機能材料 / 結晶工学 / プロトン共役電子移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、フェノール・フェノキシル間の水素結合において発現すると予想されるプロトン共役電子移動(PCET)反応を固体中における電子伝達の動作原理へと応用することを目指したものである。そのためにはPCET反応活性となるユニットを固体中に並べてそれらを相互作用させて数珠つなぎにする必要がある。研究期間中、水素結合部のPCETとπスタックによる電子の非局在化を組み合わせた連鎖、二つのPCET活性ユニットを共有結合によって繋いで一分子としたものを水素結合させた連鎖の二種類について検討した。今回我々が見出したアンスラノール・アンスロキシルは、比較的大きなπ共役平面をもつため、スタック構造を形成しやすい。また、両分子は強固な水素結合を形成したため、それらは水素結合―πスタックの繰り返しによる一次元鎖構造を固体中において形成した。水素結合部の詳細な電子密度解析、またスピン電子状態の解析から水素結合部におけるプロトンと電子の交換、つまりPCETが発現していることが明らかとなった。πスタック部の非局在化との連動については研究途上ではあるが今後分光学的測定等を駆使して明らかにしていく予定である。一方の二つの活性化ユニットをもつ分子にてついてだが、二つのフェノール骨格と複数のチオフェン環とを縮環させた分子を新たに合成した。この分子ではPCET活性部位が弱く相互作用している。両フェノールを酸化したビラジカル種と元のジオール種を混合することで均一化反応が進行し、モノラジカルモノオール体が生成した。これを結晶化することにより分子間で水素結合が形成し、一次元鎖構造を得ることに成功した。ただし水素結合部の大きなねじれから分子間でのPCETを活性化することはできなかった。今後、他の架橋構造を用いてより最適な一次元構造を構築し、電子伝達ネットワークの実現を目指す。
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