2013 Fiscal Year Research-status Report
水素結合により誘起された長寿命発光性イリジウム錯体の構築
Project/Area Number |
25810052
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
菅谷 知明 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (30633367)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 発光性イリジウム錯体 / 水素結合 |
Research Abstract |
「分子間水素結合を誘起する配位子を用いた発光性イリジウム錯体の構築」を目的とする。これまで、水素結合は発光物質の高機能化には不利だと考えられてきたが、生体分子が行っている電子移動と連動したプロトン移動(PCET)を発光性イリジウム錯体に導入することで、光励起状態において電子とプロトンが連動して移動し、電荷の再結合等による発光失活過程を抑制できると考えられる。この移動メカニズムを利用した強発光、長寿命の発光物質創製を目指す。 今年度は、水素結合ダイマー錯体(1)の合成法の確立とX線による構造解析を中心とした研究を推進した。(1)の前駆体である、2つの2-フェニルピリジル配位子(ppy)と、分子間水素結合を誘起する2,2'-ビイミダゾール配位子(H2bim)を配位させたイリジウム錯体(2)を合成した。錯体(1)の合成は、(2)をメタノール下で塩基を作用することで、定量的に得ることができた。H2bimの一つのプロトンが解離し、それ同士の分子間水素結合の存在を示唆する結果(質量分析・赤外吸収スペクトル)を得た。また、錯体の溶解性を向上させる目的で、ppy配位子をtpy配位子に変更したダイマー錯体(3)を合成した。(3)の良質な単結晶を得て、X線結晶構造解析を行った結果、2,2'-ビイミダゾレート配位子同士が相補的に水素結合したダイマー構造であることを確認した。得られた錯体の発光挙動を測定した結果、ジクロロメタンのような非極性溶媒では、錯体(1)が錯体(2)よりも発光量子収率が高く、寿命も長寿命になることが確認された。一方、N,N'-ジメチルホルムアミドのような極性溶媒中では、錯体(1)のダイマー構造が保持されず、(2)のようなモノマー構造となっていることが、分光学的・電気化学的測定から示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、発光性イリジウム錯体に分子間水素結合を誘起する配位子を組み込んだ水素結合ダイマー錯体の合成法確立と構造解析を大きな目標とした。合成法の確立、並びに分子間水素結合の存在をX線結晶構造解析等の結果より明らかにしたことで、本研究で対象としている錯体のキャラクタリゼーションが達成されたと考えている。また、溶液中での発光挙動についても検討し、非極性溶媒中で、水素結合ダイマー錯体が水素結合を有していないモノマー錯体よりも発光挙動が増大していることを見出しており、次年度以降の目標である錯体の発光メカニズムの解明に重要な知見も得られつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、得られた錯体の発光挙動について詳細に検討していく。具体的には、溶液中での発光波長、発光量子収率や発光寿命について、溶媒・溶液濃度・温度などの条件に依存してどのように変化するかを調査する。分子間水素結合の有無による発光挙動について詳細に検討し、水素結合ダイマー錯体(1)、ならびにモノマー錯体(2)の発光メカニズムを解明する。また、量子化学計算によって、得られた錯体の電子状態、発光挙動について解析し、実験結果との相関性を確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度に電気化学的測定のセル等の予算を計上していたが、次年度に詳細な検討を実施することにしたため、購入を見合わせた。 次年度は、初年度に購入を見送った電気化学測定用セルに加え、不活性雰囲気下での合成に必要なシュレンク器具や、各種試薬類、発光特性調査のための石英セルなどの消耗品を中心に物品を購入予定である。また、研究成果を発表するための学会発表に出張するための予算も計上した。
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Research Products
(15 results)