2014 Fiscal Year Research-status Report
水素結合により誘起された長寿命発光性イリジウム錯体の構築
Project/Area Number |
25810052
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
菅谷 知明 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (30633367)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 発光性イリジウム錯体 / 水素結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度は、2つの2-phenylpyridyl配位子(ppy)と、分子間水素結合を誘起する2,2'-ビイミダゾール配位子(H2bim)を配位させたイリジウム錯体(1)と、H2bimの一つのプロトンをが解離した水素結合ダイマー錯体(2)を合成し、ジクロロメタン中で錯体(2)の発光量子収率が(1)に比べ向上することを見出した。今年度は、発光メカニズム解明のために、2-phenylpyridyl配位子を種々変化させた錯体を新たに合成し、発光挙動の置換基効果について調査した。 ダイマー錯体(piq (1-phenylisoquinoline); (3), bzq (benzo[h]quinoline); (4), MeOppy (2-(4-methoxyphenyl)pyridine); (5), dfppy (2-(2,4-difluoro-phenyl)pyridine); (6)) モノマー錯体 (piq; (7), bzq; (8), MeOppy; (9), dfppy; (10))を新たに合成した。ダイマー錯体(4), (6)については、単結晶が得られたので結晶構造解析し、Hbim同士の相補的な水素結合が形成されていることを確認した。発光スペクトル、吸収スペクトルの結果から、ジクロロメタン中において水素結合型ダイマー錯体(3)~(6)の発光極大波長、吸収極大波長はモノマー錯体(7)~(10)と比較して、それぞれ約10 nm長波長シフトした。発光量子収率は、得られたダイマー錯体すべてが、モノマー錯体に比べて配位子によって差はあるものの概ね2倍程度高い値になることが確認された。このことからphenylpyridyl配位子の依らず、相補的な水素結合を有するダイマー錯体の発光挙動は向上することが確認された。また、発光の輻射速度定数、無輻射速度定数を算出した結果、ダイマー錯体を形成することで、無輻射速度定数が低下しており、強固な水素結合により熱的な失活が抑制され、発光が誘起されていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、発光メカニズム解明のために発光性イリジウム錯体の発光基幹部位である2-phenylpyridyl配位子の置換基効果を調査した。種々の配位子を用いて発光挙動を検討した結果、水素結合ダイマー錯体が水素結合を有していないモノマー錯体よりも発光挙動が増大した。また、発光の輻射速度定数kr、無輻射速度定数knrを算出した結果、ダイマー錯体を形成することで、knrが低下しており、強固な水素結合により熱的な失活が抑制され、発光が誘起されていることが示唆された。上記のように強固な水素結合による発光特性の向上メカニズムが明らかにされつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、得られた錯体の発光挙動について詳細に検討していく。具体的には、溶液中での時間分解発光スペクトルを測定し、励起状態におけるスペクトル変化を観察することにより、水素結合ダイマー錯体における発光メカニズムの理解に努める。また、これまでは、同種の錯体同士を水素結合によってダイマー化しているが、更なる発光特性向上の足がかりとして、異種の錯体同士を水素結合させたダイマー錯体を新たに合成し、その発光挙動を調べる予定である。
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Causes of Carryover |
今年度に海外学会での発表を予定していたが、次年度に開催される海外学会での発表が適切であると判断したため、今年度計上した予算を執行しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、今年度発表を見送った海外学会での発表用の出張旅費を計上した。また、各種試薬類、発光特性調査のための石英セルなど消耗品を中心に物品を購入予定である。
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Research Products
(23 results)
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[Journal Article] Relative Kinetic Reactivities of Boronic Acids and Boronate Ions toward 1,2-Diols2014
Author(s)
Takuya OKAMOTO, Asumi TANAKA, Eisuke WATANABE, Takehiro MIYAZAKI, Tomoaki SUGAYA, Satoshi IWATSUKI, Masahiko INAMO, Hideo D. TAKAGI, Akira ODANI, Koji ISHIHARA
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Journal Title
European Journal of Inorganic Chemistry
Volume: 2014
Pages: 2389-2395
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Universal Reaction Mechanism of Boronic Acid with Diol in Aqueous Solution, Based on Kinetics, and Basic Concept of Conditional Formation Constant2014
Author(s)
Yuki FURIKADO, Tomomi NAGAHATA, Takuya OKAMOTO, Tomoaki SUGAYA, Satoshi IWATSUKI, Masahiko INAMO, Hideo D. TAKAGI, Akira ODANI, and Koji ISHIHARA
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Journal Title
Chemistry - A European Journal
Volume: 20
Pages: 13194-13202
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Anomalous Enhancement of Proton Conductivity for Water Molecular Clusters Stabilized in Interstitial Spaces of Porous Molecular Crystals2014
Author(s)
Makoto TADOKORO, Yuki OHHATA, Yuriko SHIMAZAKI, Shin'ichi ISHIMARU, Teppei YAMADA, Yuki NAGAO, Tomoaki SUGAYA, Kyosuke ISODA, Yuta SUZUKI, Hiroshi KITAGAWA, Hiroshi MATSUI
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Journal Title
Chemistry - A European Journal
Volume: 20
Pages: 13698-13709
DOI
Peer Reviewed
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