2014 Fiscal Year Research-status Report
非白金族元素による実践的有機合成を指向した多点固定化触媒設計
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25810056
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岩井 智弘 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30610729)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ホスフィン配位子 / ポリスチレン / 固相担持 / ニッケル / 不均一系触媒 / クロスカップリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、実施者が独自に研究を進めている「固相多点担持ホスフィン配位子に基づく高活性不均一系金属触媒の創製」を鍵とし、非白金元素触媒による実践的有機合成手法の開発を目的としている。本年度は、新たな固定化ビスホスフィン配位子の合成と、ニッケルを触媒とするクロスカップリング反応への適用に取り組み、以下のような顕著な成果を得た。
ポリスチレン四点架橋ビスホスフィン(PS-DPPBz)は、1,2-ビス[ビス(p-スチリル)ホスフィノ]ベンゼンを架橋剤として用い、スチレン類とのラジカル懸濁重合により合成した。得られた不溶性ビーズ状ポリマーは、トルエンやテトラヒドロフランなどに対して優れた膨潤特性を示した。31P CP/MAS NMR測定による金属錯化挙動の解析から、PS-DPPBzは金属と配位子ユニットの1:1型錯体を選択的に形成することが明らかとなった。
PS-DPPBz配位子が、1,3-アゾール類とフェノール誘導体とのニッケル触媒C-H/C-O型クロスカップリング反応(JACS, 2011, 134, 169)に有効であることを見出した。対応する均一系配位子である1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼンや、以前に実施者が開発したポリスチレン三点架橋トリアリールホスフィンを用いると、反応はほとんど進行しない。このことから、ビスホスフィン配位子の固定化が、本反応における高い触媒活性の発現に重要であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ポリスチレン四点架橋ビスホスフィンを合成し、この固定化ニッケル触媒が1,3-アゾール類とフェノール誘導体とのC-H/C-O型クロスカップリングに有効であることを見出した。この研究成果は、非白金族元素触媒による実践的有機合成手法の開発を大きく推進するものであると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
ポリスチレン四点架橋ビスホスフィン配位子を用いたニッケル触媒による分子変換反応の開発を引き続き行う。これと並行して、他の第一遷移系列金属(コバルト・鉄・銅など)を用いた不均一系触媒反応への適用を進める予定である。
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Causes of Carryover |
平成27年3月に物品等を購入済みであるが、本学の会計システムの仕様上、4月以降の支払となるため、次年度使用額が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の理由により、当該助成金はすでに使用済みであり、次年度の使用予定はない。次年度は、固相多点担持触媒系を用いた反応開発を中心に研究を実施する予定であり、金属塩などの試薬類や反応容器用のガラス器具類の購入を予定している。また、次年度は本研究課題実施期間の最終年度であることから、研究経費を成果発表のための旅費や、学会誌投稿費として使用することを計画している。
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