2013 Fiscal Year Research-status Report
化学修飾カーボンナノドットによる生体関連物質・イオンの蛍光センシング
Project/Area Number |
25810083
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
森田 耕太郎 金沢大学, 物質化学系, 助教 (70396430)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | カーボンナノドット / センサー / 発光 / イオン / 検出 |
Research Abstract |
有機化合物を原料とした電気炉による加熱分解法によりカーボンナノドット(CND)を合成した。CNDの発光特性に対するヘテロ原子の効果を明らかにするため、炭素-水素-酸素(CHO)のみを含むグルコースとデンプン、ヘテロ原子として窒素(CHNO)を含むグリシンとキトサン、窒素と硫黄を(CHNSO)含むシステインとグルタチオンの計6種類の有機物を原料とした。合成時の加熱温度と加熱時間と得られたCNDの収量から、加熱温度は250℃、加熱時間は2時間が最適であることがわかった。遠心ろ過フィルターによる多段階精製から求めたCNDの合成収量は原料によって異なり、検討した条件で最も高い合成収率はグルタチオンを原料としたときの約0.02%であった。得られたCNDは300~350nmの励起光を照射することで、380~430nmに発光極大を示すことが吸収および発光スペクトル測定から明らかとなった。CNDの発光量子収率はヘテロ原子を含有することで増加する傾向が見られ、6種のCNDのうちでグルタチオンを原料としたCNDで発光量子収率が25%(励起波長330nm、発光極大373nm)となり、既存の貴金属や半導体ナノドットに匹敵する発光強度を示すことが分かった。得られたCNDは広いpH範囲(pH4~10)や高塩濃度(0.01~5M)溶液中でもでほぼ一定の発光強度を示すこと確認された。金属イオン(銅(II)、鉛(II)、カドミウム(II))共存による発光強度への影響について検討したところ、グルタチオンやシステインから合成したCNDは全ての金属に対してほぼ発光強度が変化しなかったのに対して、グルコースとデンプンから合成したCNDでは金属イオン共存による発光強度の低下が観測され、銅(II)によって最大で90%も発光強度が低下することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたマイクロ波合成法ではなく、電気炉による加熱分解法にを採用することで合成収率を向上させることに成功した。また、遠心ろ過フィルターによる多段階精製を採用することでCNDの単離を実現するだけでなく、合成収率を秤量値から正確に求めることが可能となった。多くの報告例では合成したCNDの収量や濃度が不明とされているのに対して、本研究で確立した合成および精製方法では、純度が高く濃度が正確なCND試料を調製することが可能となったと言える。スペクトル測定からグルタチオンを原料としたCNDは25%の発光量子収率を示し、pHや塩濃度、共存金属イオンによっても発光強度が影響をうけない発光プローブとして利用可能であることが分かった。また、グルコースとデンプンから合成したCNDは銅(II)に対して消光応答を示すイオンセンサーとして機能することが分かった。 CNDの化学修飾について吸収スペクトル変化に基づいた反応追跡をした。塩酸酸性CND試料水溶液中で種々のアニリン誘導体と亜硝酸ナトリウムを混合しアリールジアゾニウムイオンへと反応させた。反応溶液を塩基性(約pH10)にすることで、アリールジアゾニウムイオンからアリールラジカルが発生することがスペクトル形状変化から確認された。アリールラジカルとCNDの反応について検討したところ、アニリンではCNDの発光スペクトルに変化は見られなかったが、フェニレンジアミンではCNDの発光スペクトル強度が減少したことから、ビスアリールラジカルが複数のCNDを架橋することで、CND複合体を形成していることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
合成したCNDの基礎特性評価を進めるとともに、化学修飾CNDの生体関連物質やイオンの発光センサーとしての利用を中心に研究を実施する。 基礎特性評価としては種々の有機化合物から合成したCNDを電子顕微鏡観察することで、それぞれのCNDの平均粒径を算出する。赤外分光法によってCND表面に形成した官能基を同定し、原料の元素組成と合成条件による得られたCNDの表面状態への影響を明らかとする。CNDの平均粒径から表面官能基の密度を推定することでCNDの標的物質への配位性能および定量性について考察する。CNDの平均粒径および表面状態と発光特性との相関について調べる。 アリールラジカル反応によるCNDの化学修飾法の確立を目的とし、CNDの物質量を揃えた試料に対して異なる物質量比のアニリン誘導体との反応効率を吸収スペクトル測定を中心とした評価を進める。配位性官能基であるクラウンエーテルやエチレンジアミン四酢酸のアニリン誘導体を化学修飾することで、CNDの金属イオンに対する配位能を向上させる。遷移金属を中心とした金属イオン添加によるスペクトル変化を精査することで、化学修飾CNDの発光型センサーとしての利用を進める。
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Research Products
(16 results)