2013 Fiscal Year Research-status Report
白色X線を用いた全反射蛍光X線分析法の高感度化に関する研究
Project/Area Number |
25810088
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
国村 伸祐 東京理科大学, 工学部, 講師 (30585211)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 全反射蛍光X線 / 白色X線 / 微弱X線 |
Research Abstract |
本研究は、白色X 線を用いる全反射蛍光X 線分析法の検出感度を改善することを目的としており、本年度は、微弱白色X線を用いる小型全反射蛍光X線分析装置を利用して研究を行い以下のような成果をあげた。 1. われわれは、微弱白色X線を使用する小型全反射蛍光X線分析装置を用い低真空条件で測定を行うことで、X線管から発生する特性X線と連続X線の空気による散乱が弱まるためスペクトルのバックグラウンドやX線管のターゲット由来のW L線強度が顕著に低減すること、およびクロムで8 pgの検出下限が得られたことを以前に報告した(S. Kunimura, S. Kudo, H. Nagai, Y. Nakajima, H. Ohmori, Rev. Sci. Instrum. 84, 046108 (2013))。タングステンターゲットX線管を用いる本装置を使用して空気中で測定を行う場合、X線管のターゲット由来のW L線と重なり合う蛍光X線を発生させる元素の微量分析を行うことが困難であった。本年度は、低真空下で測定を行うことで、このような元素の検出感度を改善した。 2. 白色X線を用いる全反射蛍光X線分析では、試料台上の試料の量が多くなると入射X線の試料自体による散乱が強くなるためスペクトルのバックグラウンドが高くなる。本年度は、試料前処理として固相抽出を行い目的成分を分離濃縮することにより、これまで微量元素分析を行うことが難しかった試料に含まれるppbレベルの金属元素が分析可能になることを明らかにした。また、試料前処理として溶媒抽出も検討し、その有効性を確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
白色X線を用いる全反射蛍光X線分析法の検出感度を改善するためには、入射X線の空気、試料自体、および試料台からの散乱を低減させることが必要である。本年度は、低真空条件で測定を行い空気による散乱を低減させることで、妨害線と重なり合う蛍光X線を発生させる元素の検出感度を向上させた。また、試料前処理により試料自体からの散乱を弱めることで、これまで高感度分析を行うことが困難であった試料の微量金属元素分析を可能とした。今後、入射X線の試料台からの散乱を弱めることで、より微量な元素の分析が可能になると考えられるが、試料台からの散乱を低減させる方法については平成26年度に検討する計画である。以上のことから、本研究は順調に進行していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、平成25年度と同様に小型全反射蛍光X線分析装置を使用し、入射X線ビームの角度発散や試料台表面における照射範囲を小さくして試料台からの散乱を弱めることにより、検出下限が改善するか検討する。入射ビームの照射範囲を小さくしても試料残渣の全範囲が照射されるようにするために、試料台表面に撥水コーティング(有機溶媒試料ならば撥油コーティング)を行い試料乾燥残渣の面積を小さくする方法を用いる。入射X線の角度発散や照射範囲を小さくする方法として、入射ビームの高さ方向のサイズを小さくすることが考えられるが、より簡単に行える方法も模索していきたいと考えている。また、平成25年度に行った方法と試料台からの入射ビームの散乱を低減させる方法を組み合わせることで、環境試料、食品などに含まれるより微量な元素が分析可能となるか検討する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまでに予備研究を行ってきたこともあり、平成25年度の研究は順調に進めることができ、そのために未使用額が発生した。 平成26年度は、入射X線の角度発散や試料台表面での照射範囲を小さくすることで検出下限が良くなるか検討する予定であるが、角度発散や照射範囲を小さくするために入射X線ビームの高さ方向のサイズを小さくする方法を用いるならば、本研究で使用する分析装置ではビームサイズを変える度に手動での光軸調整が必要となり、効率よく研究が進められなくなる。効率よく研究を行うためには、入射ビームサイズの微細化の効果を検証するための実験ユニットを新たに製作する必要があると考えられ、そのためにX線管およびX線管のコントローラーを購入する予定である。その他、固相抽出カラムなど実験に必要な消耗品、学会参加費およびその旅費、論文別刷り代に支出する予定である。
|