2013 Fiscal Year Annual Research Report
高サイクル特性リチウムイオン電池に向けた表面被覆種の軟X線XAFSによる解析
Project/Area Number |
25810089
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
与儀 千尋 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 研究員 (30615654)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 硫黄系電解液添加剤 / 硫黄系活物質被覆剤 / S K殻XAFS分析 / 被膜分析 |
Research Abstract |
種々の硫黄系化合物を電解液の添加剤としたときの充放電サイクル特性評価を行い、電極表面に形成される被膜に含まれる硫黄成分について、S K殻XAFSを用いて調べた。正極にはLiCoO2、負極にはグラファイトを用い、添加剤としてジメチルサルファイド(DMSD)、ジメチルサルファイト(DMST)、プロパンサルトン(PS)を用いた。 サイクル特性評価の結果、硫黄化合物を添加しない場合と比較してPSを添加した時にサイクル特性が向上した。初期充電時の電位変化に着目すると、添加剤なしの場合に見られる電解液の還元分解反応に起因するプラトーがPSを添加した時には見られず、PSを添加することで電解液の分解が抑制されたと考えられる。初期充電後の正極・負極についてXAFS分析を行った結果、具体的な構造は明らかでないが、両極共にPSがわずかに酸化された化合物が存在することが確認された。これに対して、他の添加剤を用いた時の初期充電時のプラトーは大きく、その大きさに比例してサイクル特性が悪くなった。XAFS分析結果から、初期充電後に各添加剤の酸化還元生成物が両極に確認されており、このプラトーは添加剤の分解に起因するものと考えられる。また、DMSDおよびDMSTを用いた時の初期充電・放電後の電極表面には硫黄の低価数成分が確認されており、20サイクル後にこれら成分が減少しSO4系化合物が増加していたことから、初期充放電過程において硫黄の低価数成分が電極表面に形成されることによって、それらの酸化分解反応がLiイオンの挿入脱離に優先し、サイクル特性が劣化したと考えられる。 以上の結果から、硫黄系添加剤として、充放電中に硫黄の低価数成分を形成しないもの、あるいは電極の硫黄系被覆剤としてPSよりもわずかに酸化状態にあるものが有効であることが明らかとなった。この結果は、今後の添加剤・被覆剤開発に向けて重要な指針となりうる。
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