2014 Fiscal Year Annual Research Report
引張りによる高分子部材の構造変化を検出するレオ・オプティカル近赤外分光器の開発
Project/Area Number |
25810093
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
新澤 英之 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測フロンティア研究部門, 主任研究員 (10549893)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | レオ・オプティカル近赤外分光法 |
Outline of Annual Research Achievements |
引張による高分子鎖の流動変形を計測するレオ・オプティカル近赤外分光器の開発を行った。本手法は引張試験機と分光計測を組み合わせることで、応力・ひずみの変化と共に近赤外スペクトルを測定する。部材内の高分子鎖が延伸されることによって、スペクトル中のピーク強度は低下していく。したがって、応力-ひずみ曲線と近赤外スペクトルの変化を比較することで、分子レベルでの流動変形が巨視的な変形へと伝播していくメカニズムを明らかにすることが可能となる。
本研究では、まず引張試験中の試料の透過スペクトルを高速測定するための機構の開発を行った。工業規格に沿った引張試験では、数ミリ程度の厚みを持った部材が用いられる。このような厚みのある試料内部の変化を検出するためには、試料を十分に透過する光源を用いる必要がある。このため、一般的な赤外光よりもはるかに透過性の高い近赤外光を光源として採用した。さらに、引張によって刻々と変化する高分子構造を高速で検出するために、機械的駆動を伴わない音響光学(AOTF)フィルターからなる分光器を用いた。
作製したレオ・オプティカル近赤外分光器を用いて、種々の高分子の引張変形の解析を行った。ポリエチレンのレオ・オプティカル解析では、弾性変形時にはポリエチレンのタイ鎖と呼ばれるアモルファスの延伸が進み、引張の進行に伴いタイ鎖と連結した結晶ラメラ部分が回転し塑性変形が引き起こされる様子が観察された。ポリプロピレンナノコンポジットの観察では、試料内部に分散させたナノクレイがアモルファスの流動変形を阻害するために、従来よりも優れた機械強度を示す機構が明らかにされた。
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