2013 Fiscal Year Research-status Report
白金ナノクラスター蛍光・電子顕微鏡両用プローブを利用した生命機能可視化技術の創成
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25810100
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Research Institution | Kure National College of Technology |
Principal Investigator |
田中 慎一 呉工業高等専門学校, 自然科学系分野, 准教授 (30455357)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 白金 / ナノクラスター / 量子サイズ効果 / 生体1分子計測 / 電子顕微鏡観察 / 蛍光特性 / 分子プローブ / 医療診断 |
Research Abstract |
本年度は発光波長(分子サイズ)を規定した白金ナノクラスターの合成手法の確立について実施した。特に、生体観察へ応用する上で、発光波長の長波長化は必要不可欠である。これまでに、蛍光性白金ナノクラスターは高分子(dendrimer)を鋳型として利用して作製してきた。そこで、発光波長(分子サイズ)を規定した白金ナノクラスターの合成手法の確立するために、用いるdendrimerのサイズと還元剤(NaBH4、クエン酸等)について検討した。まず、dendrimerと白金イオンを混合してすぐに還元すると原子5個からなる青色蛍光(470 nm)のナノクラスターが合成された。次に、dendrimerと白金イオンを混合して4℃で24時間反応させると、白金イオンとdendrimerとの間で錯体を形成し、室温の場合と比べてより多くの白金イオンは取り込まれることを見出した。その後、クエン酸を用いて還元させたところ、原子8個からなる緑色蛍光(520 nm)のナノクラスターが合成された。続いて、サイズの大きいdendrimerを白金イオンと長時間反応させた後、還元反応させたところ、よりサイズが大きく黄色から赤色の蛍光特性を持つ白金ナノクラスターの合成手法の最適化に成功した。また、赤色蛍光性ナノクラスターの光学特性について評価したところ、マウスなどの生体観察に使用されている半導体量子ドットに匹敵する輝度を有することを見出した。さらに、少量ながらも、生体観察に最も適している近赤外領域に蛍光特性を持つ白金ナノクラスターも合成できていた。本研究成果によってさらに生体適合性の高い蛍光性白金ナノクラスターの実現が可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画は発光波長(分子サイズ)を規定した白金ナノクラスターの合成手法の確立とそれらの光学特性評価及び分子構造の評価である。本年度は白金ナノクラスターの合成条件の最適化とそれらの発光波長の長波長化に成功したのでおおむね研究計画通りに進んでいると考えられる。その一方で、光学特性(量子収率、蛍光寿命)評価、細胞毒性試験、質量分析測定だけでなく、電子顕微鏡観察による分子構造評価までできていない。これらの測定は測定手法・条件が確立していることと、既存の装置を使用して測定できるため試料を準備すればすぐに測定可能であるが、精度や定量性がかなり高い測定であるため、測定には不純物をほとんど含まない精製された試料を用いる必要がある。特に、合成に用いたdendrimerが残っていると、それらが光学特性などに影響を与えてしまうため、定量的に評価できない。さらに、合成後、白金ナノクラスターはdendrimerに包埋されているので、dendrimerから単離するためには、精製する前にdendrimerから白金ナノクラスターを抽出する必要がある。そこで、現在、白金ナノクラスターをdendrimerから単離するためのリガンドとなる分子の選択及び精製条件について検討している。 以上のことから、本年度は、光学特性や分子構造評価について予定通り進んでいないが、本研究計画の中で最も重要な発光波長(分子サイズ)を規定した白金ナノクラスターの合成手法の確立と発光波長の長波長化に成功しているためおおむね順調に計画通りに進んでいると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究を推進する上で解決すべき課題は次の2つである。 (1)合成した白金ナノクラスターの単離・精製:これまでに、原子数5個(青色蛍光)と8個(緑色蛍光)からなる白金ナノクラスターについて超遠心分離機と高速液体クロマトグラフィーを使用して単離・精製を実施している。特に、メルカプト酢酸を使用してdendrimerからそれらを取り出すことに成功している。本研究ではよりサイズの大きい白金ナノクラスター(蛍光特性:黄色~赤色)を合成するために、分子サイズの大きいdendrimerを使用している。そこで、これらの白金ナノクラスターを抽出するためにメルカプト酢酸を使用した各ナノクラスターに対するリガンド交換の実験条件(反応温度や時間、混合割合)について最適化する。続いて、リガンド交換後、高速液体クロマトグラフィーを使用して白金ナノクラスターの精製を実施する。これまでに、原子数5個(青色蛍光)と8個(緑色蛍光)からなる白金ナノクラスターについて高速液体クロマトグラフィーを使用した単離・精製条件について確立しているので、それらの実験条件(展開液の種類や分離速度)をもとに、本研究で合成した白金ナノクラスターの分離・精製方法について最適化する。 (2)近赤外蛍光性白金ナノクラスターの合成:近赤外光は生体への透過性も高いため、細胞だけでなく医療診断への応用も可能である。本年度の研究成果においてサイズの大きい鋳型分子(dendrimer)を用いた場合、少量ながら近赤外に蛍光特性を持つ白金ナノクラスターも合成に成功している。そこで、反応時間や還元剤の種類について検討し、それらの合成条件について最適化する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は発光波長(分子サイズ)を規定した白金ナノクラスターの合成手法の確立について取り組んできた。その中で、少量ながらも生体観察に最適な近赤外領域に蛍光特性を持つ白金ナノクラスターの合成にも成功した。しかしながら、一般的な蛍光分光光度計は700 nmまでしか蛍光特性を測定することができないため、近赤外領域における発光をより詳細に測定するためには900 nmまで測定可能な蛍光分光光度計が必要になる。 本研究では生体適合性の高い近赤外領域に蛍光特性を持つ白金ナノクラスターの合成を実施してきた。合成した近赤外蛍光性白金ナノクラスターを評価するためには900 nmまで測定可能な蛍光分光光度計が必要であるので、本予算を使用して近赤外領域まで測定可能な蛍光分光光度計を購入する。
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Research Products
(3 results)