2013 Fiscal Year Research-status Report
DNAアナログとして損傷塩基を活用した機能性ソフトマターの開発
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25810102
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小野 利和 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20643513)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 蛍光プローブ / 人工核酸 / 損傷塩基 / ナノ材料 / エネルギー移動 |
Research Abstract |
タンパク質と核酸(DNA)との間に働く分子認識や反応機構を解明するための分子ツールの創製を目的として、「損傷塩基」を導入した人工核酸の合成を行った。「損傷塩基」とは、天然塩基(A,G,C,T)の酸化や脱アミノ化や光2量化等で生じる細胞毒性の高い化学構造であり、「DNA修復酵素」によって選択的に認識除去される基質として機能するものである。そこで本研究においては、「損傷塩基」としてウラシルを用い、その近傍に蛍光色素としてピレンを2つ導入した蛍光性オリゴDNAを用いて「ウラシルDNAグリコシラーゼ」の酵素活性に応じて光る蛍光プローブとしての利用を試みた。結果として、得られた蛍光性オリゴDNAは「ウラシルDNAグリコシラーゼ」の酵素活性に応じて、塩基除去修復を受けてウラシルを脱離し、ピレンエキシマー発光由来の480nm(水色)発光が増大する現象が観測された。初期状態ではウラシルがピレンに対する消光色素として働いていたものが、「ウラシルDNAグリコシラーゼ」の酵素活性により脱離することでピレンエキシマー蛍光を回復するメカニズムに基づく。さらにピレンエキシマーの近傍にキナクドリン色素を導入した同種類の蛍光性オリゴは、ピレン蛍光の回復に加えてキナクドリン色素へのエネルギー移動を生じ、黄緑発光が増大する現象が見られた。以上のように蛍光性オリゴDNAのデザインにより、「DNA修復酵素」の酵素活性に応じて光る蛍光プローブとその多色化に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画としては、ピレンエキシマーを利用することで酵素活性に応じて水色発光が増大する蛍光プローブの設計を提案しており、実際に40倍もの蛍光強度が観測されるプローブとして機能する事を見出した。さらにキナクリドンとの組み合わせによりエネルギー移動を利用することにより、酵素活性に応じて黄緑色に発光する蛍光プローブの合成を達成しており、研究計画で提案した概念が上手く作用し発光色を調整可能なことを明らかとした。
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Strategy for Future Research Activity |
蛍光色素としてピレンを用いているため、励起光として紫外線(UV)を用いる必要があった。今後はより可視域で励起可能な色素を用いる事で、安定性の高い蛍光プローブの創製を達成したい。可能であれば赤色、近赤外領域まで拡張することを目的としたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画としてオリゴDNAの網羅的合成と精製を計画していたたため凍結乾燥機の購入を予定していた。また評価のための様々な種類のDNA修復酵素の購入を予定していた。しかしながら初年度行った研究では、所望とした性質のオリゴDNAの取得が非常に早い段階で達成でき、主に蛍光測定や観察実験等の評価を重点的に進めるなど、実験計画に変更が生じたたため。 次年度はオリゴDNAの網羅的合成や精製に必須である、試薬の購入や備品(凍結乾燥機)の購入を行う。評価のためのDNA修復酵素は、実験の進捗状況に合わせて購入する予定である。
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