2013 Fiscal Year Research-status Report
リガンド連結型一電子酸化触媒による標的タンパク質選択的ケミカルラベリング法の開発
Project/Area Number |
25810104
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 伸一 東京工業大学, 資源化学研究所, 助教 (20633134)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | タンパク質分子修飾 / ケミカルラベリング / チロシン残基修飾 / 選択的ラベル化 |
Research Abstract |
初めに、光触媒を用いたラジカル的なTyr残基修飾反応を開発した。Ru(bpy)3錯体は光照射刺激依存的に一電子酸化反応を触媒し、チロシルラジカルを生成することが知られている。発生したラジカルを特定の化合物構造で効率的にトラップすることができれば、Tyr残基に対する分子修飾反応に応用できると考えた。 種々のtyrosyl radical trapper (TRT)構造をスクリーニングした結果、N,N-dimethylamino-N’-acyl phenylenediamine構造がTyr残基と光触媒の活性化条件において効率的に縮合反応を起こすことを見出した(95%:ペプチド実験)。本ラベル化反応は精製タンパク質のラベル化にも適用できることが分かり、従来の汎用法である、求電子的な試薬を用いたタンパク質ラベル化法と直交的・相補的に使用できることを明らかとした。 次に、当初の研究計画通り、標的タンパク質の選択的ラベル化反応について検討した。リガンド連結型のRu錯体(local environmental SET catalyst : LESC)を用いて一電子酸化触媒となるRu錯体をリガンド親和性標的タンパク質に近接させることで、短寿命のチロシルラジカル生成‐トラップ反応を標的近傍で選択的に触媒することができると考えた。Carbonic anhydride(CA)を標的としてCAの親和性リガンドとRu錯体を連結させた分子をデザインし、合成した。合成上の問題点として目的化合物の精製法に検討を要したが、その手技を取得することができた。 BSAとCAから成る単純なタンパク質混在系においてコンセプトを検証した結果、仮説通り、CAを選択的にラベル化することに成功した。また、より複雑な混在系における実験として、本手法の有用性を検討した結果、マウス赤血球中のタンパク質混在系の中でCAを選択的にラベル化することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では初年度にチロシン残基修飾反応の検討、修飾剤構造の最適化等に平成25年の大半を費やす計画をしていたが、予想以上に早い段階で、ペプチドレベルでチロシン選択的に高効率の修飾反応を実現する修飾剤、反応条件を発見することができた。そこで、タンパク質親和性分子が連結したRu錯体の合成、評価を進めることとした。当初は平成26年度より開始する予定であった、生体由来成分を使った複雑なタンパク質混在での選択的ラベル化も達成することができ、コンセプトを証明するに至ったため、当初の計画以上に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、コンセプト証明のための標的タンパク質はCarbonic anhydride(CA)という広く研究されているものを対象に研究を進めたが、今後は他のタンパク質を標的とした研究を展開することで、生命現象の解明に貢献できる手法に発展させることを目標とする。また、ケミカルバイオロジー研究分野における、リガンド標的タンパク質の同定法、リガンド結合サイトの同定法に応用できる手法へと拡張を目指す。 そのためには、現行のリガンド連結型Ru錯体の合成はアミド縮合反応に基づくものであるが、リガンド内構造の官能基によって制約を受けるといった問題点がある。そこで、官能基許容性の優れたクリック反応でのリガンド-Ru錯体の連結法の開発を行い、より汎用性の高いRu連結分子の合成法確立を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の2月より前所属の学習院大学から現所属の東京工業大学資源化学研究所に異動し、平成25年度からの研究室の引っ越し作業等に割かれた時間によって実験に使用する消耗品費等が当初の予定より若干少なくなったため。 次年度使用額について、研究室の引っ越し後の実験のスタートに必要な消耗品の購入、これまでは予算としてかかっておらず当初の予定に組み込まれていなかった質量分析機器の共同使用料等に当てる。
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