2013 Fiscal Year Research-status Report
機能分離された多層構造を有する水分解用光触媒の開発と速度論的解析
Project/Area Number |
25810112
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久富 隆史 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00637481)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 光触媒 / コアシェル構造 / ドーピング / 太陽エネルギー / 水素 / 水分解 |
Research Abstract |
本研究はSrTiO3光触媒をベースとした高結晶性コア, 光吸収シェル, 触媒レイヤーからなる機能性多層構造の設計を検討し, 現在広く研究されているRhドープSrTiO3(SrTiO3:Rh)よりも高活性な可視光応答性光触媒の開発の設計を目指している. 2013年度は結晶構造の類似性や3価のRh種の安定性の観点からLaとRh共ドープSrTiO3(SrTiO3:La/Rh)の合成と光触媒活性を検討した. 結晶性のSrTiO3をコアとし, LaRhO3成分に富んだSrTiO3:La/Rhシェルを形成させることで, SrTiO3:Rhと同等かより優れる活性を示すSrTiO3:La/Rh光触媒を合成することが可能になった. SrTiO3:La,RhはSrCO3とTiO2の固相反応によりSrTiO3を合成し, 得られたSrTiO3とLa2O3, Rh2O3を前駆体とする二段階固相反応により合成した. 比較のため, SrCO3, TiO2, La2O3, Rh2O3を前駆体とする一段階固相反応による試料の合成も試みた. 二段階固相反応で合成したSrTiO3:La/RhはLaとRhのドープ量が少なくとも4%まで単相のペロブスカイト型化合物であること, 不活性な4価のRh種の生成が抑制されていること等を確かめた. これに対し, 一段階固相法による合成では1%の共ドープ量でもLaRhO3の副生が認められた. また, 二段階固相反応で合成したSrTiO3:La/Rh粒子は表面がLa及びRh成分に富んでおり, 意図したとおり高結晶性コア, 光吸収シェルからなるSrTiO3:La,Rhが得られたことを確認した. 本手法で合成したSrTiO3:La/RhはRu助触媒を担持すると水素生成反応や二段階励起水分解反応に対してSrTiO3:Rhを用いた場合に比べて3倍ほど高い光触媒活性を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
結晶性のSrTiO3粒子を前駆体として用いることで不純物ドープされたペロブスカイト型SrTiO3:La/Rhを単相で得ることができた. 当初の予定どおり, SrTiO3の結晶性を損なうことなく, 不純物準位の形成に関与するRh種を価数が制御された状態で表面近傍に偏在させることに成功した. このことは短寿命で拡散距離が短い正孔を効率よく利用するうえで効果的であると考えられる. 実際, SrTiO3:La/Rhは犠牲試薬を用いた水素生成反応や, Ta3N5と組み合わせたZスキーム型水分解反応においてSrTiO3:Rhよりも3倍ほど高い光触媒活性を示した. 一連の結果は機能分離された多層構造, すなわち, 結晶性維持のための酸化物コアと光吸収のためのドープ型酸化物シェルの組み合わせが水分解用光触媒の開発において有効であることを示している. 上記の成果を論文としてまとめることが可能な段階まで研究が進展した.
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度の成果を踏まえ, 犠牲試薬やレドックス対の添加, 光量の効果を検討し, SrTiO3:La/RhとTa3N5からなる二段階励起型水分解反応系の活性を制限している反応過程を明確にすること, 並びに水分解活性の向上を目指す. 依然として水素生成用光触媒の活性や粒子間電子移動の効率が低いことが予想されるため, 酸化助触媒, 特に, ペロブスカイト型構造をとりうる多元系酸化物を担持することで, SrTiO3:La/Rh内に生成した正孔を捕集し水分解反応に効率よく消費されるように工夫する. 酸化助触媒の共担持はSrTiO3:La/Rh光触媒単独での可視光照射下での水の完全分解の実現の観点からも興味深い. また, SrTiO3:La/RhとTa3N5を同一の導電層に固定化してシートまたはパネル状にし, それぞれの粒子を導電層を介して物理的に接合させることを試みる. より長波長応答可能な光触媒材料の開発のため, 二段階固相反応を利用してSrTiO3:La/Ru, SrTiO3:La/Irの合成に取り組む. これらの吸収端波長は先行研究により600 nm, 700 nmと報告されておりSrTiO3:La/Rhの520 nmに比べて長波長側にある. さらに, 酸化物について得られた知見を酸窒化物材料にも応用することを試みる. 具体的にはペロブスカイト型の酸化物と可視光応答性の酸窒化物をそれぞれコア, シェルとすることである. コアシェル構造を形成させることで, 可視光応答性を示す酸窒化物光触媒を結晶性を維持したまま微細化することが可能となり, 効率よく光励起キャリアを光触媒反応に利用できる可能性がある. ただし, 酸化物と酸窒化物の最適合成条件の違いや, 酸窒化物成分を粒界を生じずに均一に酸化物上に形成させる手法については慎重に検討する必要がある.
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