2015 Fiscal Year Annual Research Report
放射線グラフト重合法と原子移動ラジカル重合法の組み合わせによる新規電解質膜の創製
Project/Area Number |
25810130
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
澤田 真一 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究員 (70414571)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 燃料電池 / 電解質膜 / 放射線グラフト重合 / 原子移動ラジカル重合 / プロトン伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
固体高分子型燃料電池(PEFC)の実用化のためには、高温かつ低湿度下で良好なプロトン伝導性を有する高分子電解質膜が必要である。そこで本研究では、放射線グラフト重合(RIGP)法と原子移動ラジカル重合(ATRP)法を駆使して新規電解質膜の創製を試みた。電解質膜は、(i)エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)膜へのガンマ線照射、(ii)スチレンとクロロメチルスチレン(CMS)のRIGP、(iii)CMSユニットを起点とするスチレンスルホン酸エチル(EtSS)のATRP、(iv)EtSSユニットの加水分解によるスルホン酸基の導入、という4つのプロセスを経て作製された。プロセス(iii)において、一般的な溶液中のATRPと比較し、触媒(臭化銅)と配位子(PMDETA)の濃度を約100倍に上げることで、50 ℃という比較的低温でATRPが進行することを見出した。ATRPの反応時間に応じて、EtSSのグラフト率を24~240%の広範囲で制御できた。これらのグラフト膜を加水分解し、イオン交換容量0.96~2.9 mmol/gの電解質膜を作製した。温度80℃、相対湿度30%の環境下では、RIGP/ATRP電解質膜は従来のRIGP電解質膜よりも良好なプロトン伝導性を示し、また含水率も高かった。RIGP/ATRP電解質膜では、プロトン伝導を担うポリスチレンスルホン酸(PSSA)グラフト鎖がETFE主鎖から離れている。そのため、PSSAグラフト鎖どうしが凝集して連結性の良いイオンチャンネルを形成し、プロトン伝導を促進すると推測される。最後に、RIGP/ATRP電解質膜をPEFCセルに組み込み、温度80 ℃、相対湿度30%の環境下で発電試験を行った。PEFCの開回路電圧は0.94 V、最大出力密度は42 mW/cm2を示し、この新規電解質膜を用いたPEFCが作動することを確認できた。
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Research Products
(2 results)