2013 Fiscal Year Research-status Report
インデンテーション法による水素侵入層の局所的かつ定量的評価手法の構築
Project/Area Number |
25820001
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高桑 脩 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60633518)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 水素脆化 / インデンテーション法 / 圧子押込み試験 |
Research Abstract |
(1)表面層に水素を添加したオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lの降伏応力が300MPaから680MPaまで大幅に上層することをインデンテーション法および応答曲面を用いた逆問題解析により明らかにした。インデンテーション法を水素添加した表面に行うと圧子押込み深さが大きく減少する。これは圧子押込み過程において圧子先端での塑性変形に水素が影響を及ぼすことを意味する。すなわち,塑性変形における転位の射出,移動を阻害する働きを水素が持ち,その結果,降伏応力が顕著に上昇したといえる。様々な水素添加条件で水素をチャージし,その圧子押込み深さの水素による減少率(硬化率)は水素量と高い線形の相関関係があることを明らかにした。水素による機械的特性の変化に対して,インデンテーション法は高い応答性を有しており,水素が金属材料に与える影響を局所的に評価することができるといえる。なお本結果はInternational Journal of Hydrogen Energyに掲載された。 (2)一般的なビッカース硬さにおいて,水素が未添加の場合はビッカース硬さは負荷荷重に依存しないが,本研究課題にて,水素が塑性変形時に影響を与えることから水素添加材では負荷荷重の変化によりビッカース硬さに差異が生じた。また二次イオン質量分析装置SIMSを利用して水素深さ分布を調べたところ,ビッカース圧子の押込み深さ(塑性変形領域)と水素深さ分布の関係からビッカース硬さが変化し,圧子が材料から受ける弾性反力と水素-転位間の相互作用(硬化作用)の重ね合わせで表せることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績にも記述したが,H25年度の目標であるオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lの水素による降伏応力変化を明らかにし,その結果の学術雑誌掲載が決定したことからも客観的に見て順調に進展しているといえる。また,ガスクロマトグラフを用いた昇温脱離法による水素量評価により,インデンテーション法により得られた水素起因の押込み深さ変化を水素量と結びつけることができ,局所的かつ定量的な水素侵入評価法の第一段階を構築できたといえる。以上のことから,当該研究課題はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,表面改質を行った材料に対して,H25年度に構築したインデンテーション法を用いた局所的水素侵入評価法を用いて水素侵入挙動に与える表面歪の影響を明らかにし,表面歪制御によって水素侵入挙動を制御できることを実証し,水素社会実現の障壁である水素脆化抑止法を提案する。取り扱う材料はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316L,耐熱用材料SUH660,クロムモリブデン鋼SCM435とする。表面改質による表面歪制御には市販の表面仕上げ用研磨材とキャビテーションピーニングを利用する。 水素侵入により表面層の静水圧応力に変化が生じる可能性があり,この変化を用いて水素侵入挙動を簡便に評価できる可能性があるため,水素添加後のインデンテーション法だけでなく応力測定も実施する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
少額ではあるが,次年度使用額は,今年度の研究を効率的に推進したことにより発生した未使用額であり,次年度以降に実施する実験に必要な経費として,H26年度請求額と合わせて使用するよていである。 表面改質を実施する際の治具の一部を作成するために使用する予定である。
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